植物の五大栄養素 サッカー4-4-2戦術がぴったりハマる
五大栄養素といえば「炭水化物、脂質、たんぱく質、無機質、ビタミン」の5つを表しますが、これは人間の身体に必要な成分のことです。これが植物になると必要な栄養素が違ってきて、
三大栄養素として有名な窒素、リン酸、カリウム
ここにカルシウム、マグネシウムを加えた5つが五大栄養素と言われます。
NPKでしょーわかっとるよ、大事だよねー
土づくりで石灰を撒いとるよー
うちは石灰じゃなくて苦土石灰を選んどるよー
農家なら知っているのが常識であるかのように語られます。いまさら言われなくてもじゅうぶん知ってますよと主張する方もいるでしょう。ですが待ってください。その知識は本当に栽培で活かされていますか?もっと深く知っていたら栽培レベルがアップするとしても知らんぷりできますか?
筋肉は傷ついた繊維を修復することによって、さらに太く、強く成長します。これを知っていれば、トレーニングで強い負荷をかけて筋肉痛を起こそうとしますよね。効率的に筋力アップするトレーニングをしますよね。理屈を知らないでなんとなく筋トレしているのと、筋肉修復の仕組みを知って筋トレするのとでは結果が大きく違ってきます。
作物の栽培もこれと同じです。窒素15kg、リン酸10kg、カリウム10kg施肥するように言われたから、作付前に石灰を入れるように言われたから、とマニュアルどおりに育てられた作物。窒素やリン酸やカリウムが作物の体内でどのように作用するのかを知り、作物が育ちやすいように施肥設計・肥培管理して育てられた作物。両者が同じ結果になると思いますか?
もちろん学者レベルに詳しく知る必要はありません。パソコンを使いこなすために二進法(0と1だけの世界)から学ぶ必要がないのと同じで。その知識が必要なのはパソコンの使用者じゃなく開発者です。あくまでも栽培をする側、利用者として知るべき知識があるという話です。
五大栄養素は植物にとってなぜ必要なのか、どんな役割を担っているのか、施肥することでどのように作用するのか。
ちゃんと知っておくと施肥設計のときに独自のアレンジができますし、植物の顔色が分かるようになれば病虫害の発生を抑えて作物を健康に育てられるようにもなります。知っておいて損はないと思いますよ。
点取り屋 窒素の役割 ポジションFW
植物が光合成によって作り出したブドウ糖(炭水化物)は窒素などとくっついてたんぱく質ができます。たんぱく質は植物の体を構成する主な要素なので、窒素は植物の体が大きく成長するためには欠かせません。
成長=ゴールと考えればわかりやすいかもしれません。得点できるかどうかは窒素の活躍にかかっています。FWを増やせば攻撃的になるので得点の可能性は高くなりますが、その代わり守備が弱くなるので病虫害(失点)の危険が高まります。
窒素ばかり多く与えればいいわけじゃないのがお分かりいただけるでしょうか。
司令塔 リン酸の役割 ポジションMF
リン酸はエネルギー代謝を調整する基本成分で新陳代謝と強い関係があります。また、遺伝子の塩基配列にもリン酸が含まれているので、細胞一つ一つにリン酸が必要です。代謝や遺伝情報などによって体をつくる時の調整役となる基本要素がリン酸というわけです。
サッカーでいえば司令塔でしょうか。ゲームをコントロールしてチームを勝利に導く大切なポジション。リン酸がいなければ各栄養素はバラバラの動きをしてしまい、守備も攻撃もできなくなります。
中盤の要 カリの役割 ポジション守備的MF
カリは体内の水分に溶け込んで栄養分をスムーズに運ぶ役割を担っているので、根や葉の成長に大きく関わっています。水分・栄養補給を円滑にするスポーツドリンクのようなものでしょうか。また、カリがあると植物の中の水分を維持することができます。ですので、雨や曇りから急に日が照った時に、植物がへなへなっとしてしまうことがありますがカリにはそれを防ぐ役割があります。
サッカーでいえばボールの運び屋でしょうか。DFからFWへ、中盤を支配しながらボールを前線へ送り出す役割。すごく重要なポジションですよね。
トップ下 苦土の役割 ポジション攻撃的MF
苦土(マグネシウム)は葉緑素の中心にあり光合成に欠かせません。植物にとって光合成がどれだけ重要な活動なのかは言うまでもありませんが、盛んに光合成できるかどうかは苦土にかかっていると言っても過言ではありません。これが欠乏すると葉が脱色したかのように薄くなったりします。
MFですがけっこう攻撃的にポジショニングします。FW窒素と連携してゴールを狙ってますから。また、苦土が中盤をしっかり固めるとリン酸の動きがよくなることが知られています。
守備の要 石灰の役割 ポジションDFとGK
石灰(カルシウム)はPHを調整するために使われる土壌改良資材のように考えられていますが、石灰は細胞壁などの組織をつくる必須成分です。細胞壁がしっかりできると植物体が頑丈になり病害虫への抵抗力がアップする点は見逃せません。
ポジションはDFとGK。守備の要です。細胞壁の成分になるので植物の体を大きくするために貢献してくれます。つまりサイドバックが攻撃に参加することもあるということですね。とにかく失点(病虫害)をおさえるために欠かせないやつらです。
ベンチには微量要素
鉄・マンガン・硫黄・ホウ素などの微量要素は補欠。戦況に応じていつでもピッチに立てるようベンチ入りしています。
まとめ
窒素・リン酸・カリ・苦土・石灰の5要素は植物にとって成長にとくに欠かせないものです。どれかが多くあればいいというものではなく、各要素のバランスがとれていることが植物の成長や健康に大きく関わってきます。
一般的には石灰:苦土:カリウム=5:2:1のバランスがよいとされており、今回はサッカーのチーム編成になぞらえてその割合を反映させてみました。攻撃的に大量得点を狙うのか、守備的にカウンターサッカーを展開するのか、戦術は栽培者に委ねられていますがFW・MF・DFをバランスよく配置することで勝てるチームになることはなんとなく理解できますよね。
近代サッカーでは4-4-2のフォーメーションが戦術的に普及していますが、植物でも4-4-2のバランスがどうやらよさそうです。もちろん作物によっては5-3-1がよかったり4-3-2-1の戦術が向いていたり工夫が必要でしょうけど、基本の型は4-4-2。ぜひサッカーを頭に思い浮かべながら植物の5大栄養素を考えてみてはいかがでしょうか。
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