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半側空間無視[空間性注意障害説]

お疲れ様です。はらリハです。

本日は…
半側空間無視:半側空間無視のメカニズム…空間性注意障害説」について解説します。

※ 引用、参考書籍

なぜ左空間を無視するのか?

 なぜ、右半球損傷(左片麻痺)によって左空間の無視が出現するのか?

 そのメカニズムとしてMesulumは注意障害説を提唱しました。

Mesulumの仮説

 以下、報告しています。

「右半球は左右視野に注意を向け、左半球は右視野のみに注意を向けるために、右半球損傷で左の半側空間無視が出現する」と報告

Mesulum 1987
半側空間無視
-基盤となる障害と表現を修飾する問題点-
石合純夫

 人は、視覚で空間を認知する場合、右半球(▲)は両側の空間を認識(注意)しています。

 それ対して、左半球(△)は右側の空間のみ認識(注意)しています。

 その為、脳卒中で右半球を損傷してしまうと、上の図でいう▲が消えてしまう為、左空間のみが認識(注意)できなくなり、左半側空間無視となります。

 これらのメカニズムをMesulumが仮説として報告しています。

空間性注意の神経ネットワーク

 Mesulumは半側空間無視の病態について『注意機能』が深く関わっているのではないか、と考えています。

 そこで、注意機能の中でも「空間性注意」に関わる脳領域を以下に紹介します。

空間性注意の神経ネットワーク
☑︎ 頭頂葉
☑︎ 前頭葉
☑︎ 帯状回と皮質下の視床
☑︎ 線状体
☑︎ 上丘

ヒト脳の側性化と臨床
 ―言語と空間性注意の神経ネットワーク―
石合純夫

 それぞれの役割を解説していきます。

1)頭頂葉

 頭頂葉は、多数の感覚モダリティに基づく「空間地図」と関連する空間性情報、運動出力との接点と位置付けられています。

2)前頭葉

 前頭葉は、注意の移動を運動出力に変換する役割を担います。

3)帯状回

 外界の出来事に対する重要性を見出して発動性を高め、課題遂行に対する注意のレベルを維持する役割を担います。

4)視床

 ネットワークの各皮質領域と連絡を持ち、賦活のレベルあるいは覚醒度をコントロールします。

「これらの構成部位の1つの病巣でも、空間性注意機能の全体的障害を生じる」と報告

Mesulam

解剖学的にみた病巣

 これらの仮説に加えて、

 DoricchiとTomaiuoloは…

☑︎ 解剖学的にみた空間性注意の神経ネットワークと半側空間無視を起こす病巣
☑︎ 慢性期に半側空間無視を残す例の病巣

 について報告しています。

ヒト脳の側性化と臨床
 ―言語と空間性注意の神経ネットワーク―
石合純夫

解剖学的に見た空間性注意の神経ネットワークと半側空間無視を起こす病巣
 下頭頂小葉と下前頭回後部は「上縦束(ⅡとⅢ)」で結ばれる。
 また…
☑︎ 内包後脚は視床と下頭頂小葉と連絡する繊維
☑︎ 内包前脚は視床と前頭葉の帯状回とを連携する繊維
 も含まれている。
 下頭頂小葉または前頭葉の皮質、皮質下病巣は「上縦束or視床」の連絡繊維も損傷する。
→ そのため「空間性注意のネットワーク」の広範囲な機能低下により、半側空間無視が慢性化しやすい。

高次脳機能障害学 石合純夫

 加えて、注意機能は病巣部位の関連から「能動的注意」と「受動的注意」で症状を分類しています。

1)能動的注意(感覚性側面)

 能動的注意では、目的を持って行動している際に、トップダウンを対象に対して注意を向かせる場合に働きます。

例)机上検査、リハビリという限られた環境での課題、勉強、テレビ鑑賞など

 能動的注意を担うのが下頭頂小葉と考えられ、その損傷では、水平な線分の真ん中を見つける線分二等分線試験などで無視が目立つと報告されています。

2)受動的注意(運動性側面)

 受動的注意では、外部から刺激が入り、その刺激に対して注意を向ける場合に働きます。

例)突然横から人が現れた時に気づく、道の障害物に気づく、声をかけられた時に振り返るなど

 受動的注意を担うのが「下前頭回から中前頭回の後部」と考えられ、その損傷では、標的を選択する探索課題で無視が目立つと報告しています。

 この2つの空間性注意は脳の働く領域(ここでいう神経ネットワーク)が違うことがわかっており、CorbettaとShulmanは以下に仮説を報告しています。

背側注意/腹側注意ネットワーク

ヒト脳の側性化と臨床
 ―言語と空間性注意の神経ネットワーク―
石合純夫

1)背側注意ネットワーク(DNA)

 背側注意ネットワークは…

[脳領域]
☑︎ 上頭頂小葉
☑︎ 頭頂間溝皮質
☑︎ 上前頭回
☑︎ 前頭眼野皮質

 上記、それらと連絡する「上縦束Ⅰ」からなります。 

 機能の大まかな内容は、

空間内の刺激とそれに対する反応においてトップダウン(目標指向性)の選択を準備、適用する機能を担い、左右両半球の背側注意ネットワークの機能はほぼ同等

 と報告されています。

 前述で述べた「能動的注意」です。

2)腹側注意ネットワーク(VAN)

 腹側注意ネットワークは…

[脳領域]
☑︎ 皮質(下頭頂小葉)
☑︎ 中、下前頭回

 上記、それらと連絡する「上縦束Ⅱ球状束」からなります。

 機能の大まかな内容は、

空間における目立った、予期しない刺激のボトムアップ的入力に対して、行動上意義のあるものへの注意を再指向して検出する機能を担う

 と報告されています。

 前述で述べた「受動的注意」です。

3)DNAとVANをどう捉えるか

 腹側注意ネットワークは右半球優位であり、背側と腹側のネットワークは、協働して空間性注意をコントロールしています。

 上縦束Ⅱは、側頭-頭頂葉接合部皮質と上前頭回、前頭眼野皮質とを結ぶ形で、腹側注意ネットワークとはい即注意ネットワークの橋渡しを行っています。

 ここで重要なのは「背側注意ネットワークは両半球に存在しているが、腹側注意ネットワークスは右半球のみ存在する」です。

 つまり、半側空間無視における病態解釈を行う上で「受動的注意の低下」が問題になるわけです。

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