半側空間無視[BIT検査の深掘り]
お疲れ様です。はらリハです。
本日は…
「半側空間無視の評価:BIT行動性無視検査から分析できる病態」について解説します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/24/3/24_3_232/_pdf/-char/ja
※ 引用、参考書籍
はじめに
半側空間無視の検査法は「抹消試験/模写試験/描画試験/線分二等分線」から総合し、日本人を対象として標準化したものが『BIT行動性無視検査』の通常検査です。
個々の下位検査のカットオフ点と検査結果を比較することで半側空間無視を有無を検査できますが、あくまで「半側空間無視の見落としが少なくなる」であり、半側空間無視「なし」と診断することは難しいです。
BIT検査を含めて、日常生活場面の観察が重要になります。
ここでは、「検査時の注意事項/結果からわかる半側空間無視の病態」について深掘りします。
検査の環境設定
☑︎ 患者と検者が机を挟んで向かい合った形
☑︎ 周囲の音や視覚情報の影響を受けやすいので、他者の出入りの少ない静かな環境
カットオフ値
1)抹消試験
難易度としては…
☑︎ 易しい:線分抹消試験
☑︎ 難しい:選択的抹消試験
であり、線分抹消試験のようにすべての刺激に印を付けるものは易しく、多数の刺激の中から標的のみを探して印を付ける選択的抹消試験は前者と比べて難しいです。
星印抹消試験程度が標的選択の負荷として適当ですが、軽度または慢性期の無視患者はこのカットオフ点をクリアしてしまうことがあります。
所要時間が長い場合には、時間をかけて代償的探索が行われていると考えられ可能性があります。
また、不規則な走査経路も半側空間無視の存在の可能性を示唆しています。
教示方法
2)線分二等分線
これらは…
☑︎ 長い線分では左側にまだ「ある」ことを無視して右よりに二等分する
☑︎ 短い線分では左端よりも先が「ない」ことを無視して左よりに二等分する
ということがわかります。
また、
と報告があります。
これに加えて、半側空間無視患者が線分を二等分する際の視線移動をアイカメラで検討した記録があります(Ishiai ら1989)。
と報告しています。
一方、25mmのような短い線分では全体を見てもその情報を二等分に有効利用できず、しばしば左よりに二等分するため、半側空間無視患者がどのような線分イメージを二等分しているかについて、タッチパネルを用いて検討しました(石合ら2002)。
これらを考え合わせると、半側空間無視患者は、注意を向けた右側部分の情報をもとに、左側部分は刺激にほとんど依存しないイメージを見ていると推定できます。
教示方法
3)模写/描画試験
模写、描画では、左側の描き落としや不完全さなど、結果の左右差に注目した判定が主体となります。
また、紙面の右側に偏って描くのも無視の所見として観察できます。
ひまわりのような花の絵の左半分を描き落とすのが典型的な半側空間無視の所見で、描き終えた後に、手本と同じようにできたかを問うと、右側の花弁の歪みや不揃いを指摘するが左側の描き落としには気づきません。
それに対して、
と報告があります。
これは、花の絵の模写は右側の花弁から開始され、注意は動作を行っている部分に向き、左側へ移動しにくくなる。その結果、左側の有無の識別と比べて、模写では左側の空白に気づきにくいと考えられます。
半側空間無視患者は、模写を始める前に花弁の枚数を数えることが多いです。
また、ぐるりとすべて数えられても、描く時には、その枚数を右側に配置してやめてしまうことが多いです。
普通に考えれば、花の絵は中心の周りに花弁を一周させれば完成できるはずですが、模写のかわりに花弁を中心のまわりに一周するまで描くように指示すると、半側空間無視患者であっても左側も描けるようになります。
このことから、花弁の枚数を再現しようとする言語性方略が、花弁を周状に配置しようとする空間性方略よりも優位である点が無視発現の一因と推定されます。
時計では、12→6→3→9 などの順番で基準となる時刻を記入した後に、残りを記入するという方略が観察されやすいです。
このように、課題によっては、言語性知能が保存されていると、知識や計画性などを活用して半側空間無視を代償することが可能となります。
教示方法
終わりに
半側空間無視の検査は、臨床的な診断目的で実施する場合でも、患者さんがどのような点で困難を示し、どのようにしてそれを乗り越えようとしているのかに注意を払い、根底にある空間処理の問題を考えていきましょう、