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半側空間無視[方向性運動低下説]

お疲れ様です。はらリハです。

本日は…
半側空間無視:半側空間無視のメカニズム…方向性運動低下説」について解説します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/33/8/33_8_529/_pdf

※ 引用、参考書籍

方向性運動低下説

 簡単に説明すると…

『知っているけど左へ手が動いてくれない』

 です。

 これはHeilmanらが提唱した説です。

「左方向に向かう運動の開始、遂行に障害があるために無視が起こる」と述べている

Heilmanら

Tegnerらの線分抹消試験

 Tegnerらが提唱する視線の向きと運動の位置、方向を解離させて半側空間無視の検討として、手前に置いた視覚刺激が左右逆転して見える合わせ鏡を用いた線分抹消試験を考案しました。

 この方法では、左向きの運動の障害が主体であれば、右に見えるのが左空間にある線分に印をつけられなくなります

 このような方向性運動低下では、前頭葉損傷で多いと報告がありますが、手を左に動かすと鏡の中の手が動くという不自然さもあり、空間的注意、運動以外の障害の影響を受ける可能性は高いです。

石合らの線分延長課題

 Tegnerらの問題点に対して、石合らは注意を十分に左方に向けさせた状態における左方向の運動について検討するために「線分延長課題」を作成しました。

[線分延長課題]
紙の中央の印から右方へ印刷した線分を提示し、それと等しい長さだけ左向きに線を延長させる課題。
印刷した線分の長さは「100mmまたは50mm」として、左半側空間、正面正中、右半側空間の3通りの位置で実施。
※ 対象は頭頂葉を中心とする病巣による無視患者10例、前頭葉病変による無視患者3例

線分延長課題の内容
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/33/8/33_8_529/_pdf

 上記の図は重度の半側空間無視を呈した頭頂損傷の患者さんの結果で、二等分では典型的な右方偏位を認めましたが、線分延長では印刷した右の線分とほぼ等しい長さを左方へ延長できました。

 それに対して、前頭葉損傷による半側空間無視の方も同じ結果となりました。

 つまり…

 「病巣、無視の有無、重症度」に関わらず、左半側空間、正面正中、右半側空間において、線分延長課題では注意が鉛筆の先端すなわち延長している線の左端に十分に向けられ、印刷された右の長さと延長している左の長さの比較が正しく行われたと考えられます。

 また、この結果は病巣と反対側に向かう運動自体に障害がないことを示している。

 したがって、右頭頂葉、右前頭葉いずれの損傷による左半側空間無視であっても、方向性運動低下がその発現に果たす役割は小さいと考えられ、注意障害が主な原因と考えられます。

要約

 つまり、方向性運動低下説とは…

 視覚や知覚など注意の方向性による入力の障害によるものではなく、左方向へ向かう眼球や手の運動が低下する為に半側空間無視が出現するという説です。

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