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ゆるコミン
原作、脚本、梵天彪雅
横山幸紀『ようこそ、綾部に』
鳴島良文『こんにちは、初めまして電話で
お話しさせていただきました鳴島です』
横山幸紀『鳴島さん、私の車の後ろ着いて来てもらえますか?』
鳴島良文『え?まさか、、物件はまだこの先なんですか?』
横山幸紀『そりゃあもう、綾部のチョモランマと言われる位、奥地ですから……』
鳴島良文『チョ、チョモランマ⁉️ですか⁉️』
〜綾部市街から車で進むこと1時間〜
バタン 車の扉を開け閉める音
横山幸紀『さぁ!鳴島さんここが綾部のチョモランマ 高天原村です』
鳴島良文『…ここが高天原村……』
横山幸紀『そしてあの奥に見えるのが鳴島さんが購入してくださった物件です』
ぼーっとしてる鳴島を横目に横山幸紀が先に歩き始める
鳴島良文『あ!…チョっ!ちょっと待ってください!』
古民家につく
鳴島良文『ここが今日から私が住む家……はは笑』
横山幸紀『今は高齢者が多くて限界集落なんて状況になってるけど、イノシシとかカモシカが名物でよく取れるんだわ』
鳴島良文『ヘェ〜……え⁉️い、イノシシ⁉️あ、危なくないんですか!?』
横山幸紀『慣れちゃえば大した事ないし、何年か前に移住して来た斉藤君がいるから、ここの暮らしとか色々聞くと良いよ。彼、面倒見いいから』
鳴島がメモ帳を取り出し書き始める
鳴島良文『さいとうさん、斉藤さんですね、有難うございます』
横山幸紀『あと、ここの古民家以外に休耕田やイチョウ畑、山林があるんだけど、、山林は、20万平米あるから……使えるなら好きに使って』
鳴島良文『20万平米⁉️』
横山幸紀『……私ももう少し若ければもっとこの村に住んでいたかったんだけどね……家内を亡くしてから10年、京都市内の息子夫婦が一人暮らしを心配して今回、家を離れる事にしたんだわ……家、買ってくれて有難ね、鳴島さん』
鳴島良文『……大切に住まわせていただきますありがとうございます』
ナレ 鳴島良文は今年で52歳になる。
大阪市十三の某建設会社の営業として死にものぐるいで働いて来たが、長年に渡る元請け先の理不尽な要求に嫌気を刺して某建設会社を早期退職したのである。
〜〜大阪市十三某建設会社屋上〜〜
3ヶ月前
富田篤『鳴島先輩!、なんで、辞めちゃうんですか!俺、もっとサポートしますよ!』
鳴島良文『…富田……俺は長年、理不尽な要求をして来た元請けにもキレたけどそれは理由の一つであって、根本的に会社辞める理由はそれだけじゃないねん…』
富田『え?』
鳴島良文『富田、こんな人が人を貶めるような世界で人は幸せになれると思うか?』
富田『や、、それは、働いて金稼いで、車買って、好きな女性と結婚して子供が産まれて家庭を作れば…幸せなんちゃいますか?』
鳴島良文『……確かにそれも一つの形やな、
去年、亡くなったけど俺にも妻がいた、子には恵まれなかったけど……
俺はずっと働き詰めでアイツが白血病だって知らずに……いや、もしかして、聞いてたのに聞かないふりをしつ逃げてたのかもしれんけど、、、結局、気づいたら死に目にも会えず死んでた……』
鳴島良文『俺も仕事で辛かったけどアイツも俺が居なくて寂しくて辛かったんちゃうかな……』
富田篤『先輩、、奥さん亡くなったのは悲しい話やけど、、、それは、辞める理由にはならないんじゃ…』
鳴島良文『いや、、、俺には子はいいひんかったけど、嫌なこと我慢して働いてもお互いがストレス貯めるようなこんな国自体が可笑しい思うねん……会社辞めて、退職金と今まで貯めた金で山奥に土地買うて、誰も自分らしく生きられる桃源郷作ったるねん』
富田篤『…先輩、俺も、仕事落ち着いたら先輩が作る桃源郷、訪ねてもいいですか?』
鳴島良文『ああ!いいよ!いいよ!用意しとくから来いよ!来る者拒まず、去る者拒まずやで!』
〜〜〜綾部市高天原村〜〜〜
現在
箱からチェンソーを取り出す鳴島
一緒に入ってる手紙を読む
富田篤(手紙)『先輩、お元気ですか?電話で山林があるとのお話しでしたので、役に立つかはわかりませんがチェンソー送ります、使ってください』
鳴島良文『富田め、粋なことしやがって』
〜〜高天原村山林〜〜
ナレ 富田からプレゼントされたチェンソー片手に意気揚揚と木を切り始める鳴島。
鳴島良文『……うーん…倒れんなぁ…なんで?』
ナレ 結局、使い方が分からず意気消沈した鳴島は古民家へ帰る。
10月1日
鳴島良文『……んー、色々と試したけど、何もかも上手く行かへん……』
ドンドンドン
???『すいません、誰かいますか?』
鳴島良文『はい、います!少しお待ち下さい』
玄関へと走る鳴島
玄関を開ける ガラガラ
梵天彪雅『私、大阪の十三から鳴島さんの話を聞きました梵天彪雅と申します。』
鳴島良文『はぁ……誰に聞かれたんですか?
富田って奴ですか?』
梵天彪雅『いや、十三にある居酒屋コケシの大将から綾部の山奥の山林で面白いことやってる方が、いるって聞きまして私の力もお貸し出来るかと思いまして…』
鳴島『十三の…コケシ……ああ!道山さんか!……力貸してくれるのは有難いけど、
退職金も底尽きそうで給料とか払えないんだわ……すまんな!』
玄関を閉めようとする鳴島に梵天が扉を止め
梵天彪雅『いや、お金の面は大丈夫ですから私は薪木が燃えてる最中の火のゆらめきを見てるのが好きなんで、それが対価で構いませんよ! 実は元林業従事者なんです』
ナレ 林業従事者とはいわゆる木こりである。
鳴島良文(心の声)『火のゆらめきって……放火魔ちゃうやろな……でも、林業やってたんなら棚からぼた餅やで、来る者拒まずの精神みせたらなな!』
鳴島良文『ぼん、、梵天さん言うたっけ?
宜しく頼むわ!』
梵天彪雅『…!はい!有難うございます!
……それでついでと言っては何ですがお願いしたい事がありまして、コケシの大将がここのこと結構、宣伝してましたんで、精神的に病んだ人たちが来るので鳴島さん、話聞いたって欲しいんですわ』
鳴島良文『ああ……そんなことなら、、願ったり叶ったりやで!実はな、梵天さん、俺はこの古民家で桃源郷シャングリラ作ったるねん』
ナレ この日は鳴島お手製の囲炉裏で酒を交わしながら鳴島の夢、桃源郷シャングリラの話で盛り上がった。
10月3日
〜〜〜高天原村山林〜〜〜
バタン! バタン!バタン!
ウィーーン!バタン!バタン!バタン!バタン!バタン!バタン!バタン!
ナレ 梵天彪雅がチェンソーを刀を振り回すが如く一気に木を伐採していく
梵天彪雅『鳴島さん、細かく切りますんで車に積んでください!』
鳴島良文『やるじゃん!しかも、早い!』
〜〜鳴島の古民家〜〜
鳴島良文『薪はもう、買わなくても冬越せるなぁ
有難う梵天さん!』
梵天彪雅『………だといいんですが、これだけでは、かなり少ないですよ…』
鳴島良文『…⁉️いやいや、薪木の山ですやん💦一冬位無くなりませんって笑』
ナレ ところがこの数週間のうちに梵天彪雅の予想通り薪はキレイさっぱりなくなってしまうのである。
〜〜〜古民家内土間〜〜〜
梵天彪雅『鳴島さん、この五右衛門風呂って薪であっためられないんですか?』
鳴島良文『…やっぱり、それ、気になっちゃったか……前に何回か挑戦したんだけどね、
ぬるいんだよ…壊れてるんだよ…きっと…』
ナレ 梵天が風呂の釜を除き、外にでる
梵天彪雅『………ちょっと外、見て来ますわ。』
鳴島良文『…煙突見に行ったの?』
梵天彪雅『……鳴島さん、これ、多分壊れてないですよ…』
鳴島良文『!?』
梵天彪雅『火を炊こう鳴島さん!』
ナレ 煙が舞い上がり部屋中に煙に撒かれる
鳴島良文『いゃ〜〜、流石に無理でしょ💦
もう、やめようよ』
梵天彪雅『もうちょい、もうちょいやらせて』
ボコっ!ボコっ!バチ!バチ!
ナレ 浴室から奇妙な音がするのに気づく鳴島が浴室を覗く、浴槽から湯気が出ている
鳴島良文『⁉️梵天さん!梵天さん!まだ少し温いけど、お湯になってますよ』
梵天彪雅『……やっぱり、生きてますよ五右衛門風呂!鳴島さん、外の煙突から煙出てるか見てもらえますか?』
ナレ 鳴島が外に飛び出すとモウモウと煙が吹き出している
鳴島良文『‼️‼️すごい‼️五右衛門風呂が復活した‼️』
ナレ この日は五右衛門風呂が復活したことに喜び合い翌日の3時になっていた
1月27日
派手な顔した女性が高天原村の鳴島の古民家を訪れる
鳴島良文『はーい!どなたでしょう?』
中野『ここね?』
鳴島良文『はい?』
中野『ここがコケシのマスターが言ってた古民家ね、アンタが鳥島ね?』
鳴島良文『…いや、鳴島です💦』
中野『ここで都会で疲れた心を癒せるってマスターが…』
鳴島良文『……まぁ、癒せるかどうかはわからないですが一泊して行きます?』
中野『泊まれるの?いくら?』
鳴島良文『…将来的にシェアハウスとか民泊とか考えてますけど、今は興味持ってもらう宣伝ということで無料でいいですよ』
中野『気に行ったら宣伝はするわ』
鳴島良文『宜しくお願いします、梵天さん、ピザ釜の用意お願いします!』
梵天彪雅『はーい!』
中野『ピザ釜?ピザ釜なんてあるの?古民家に?』
鳴島良文『ピザ釜だけじゃないですよ
五右衛門風呂や囲炉裏、薪ストーブとかもありますから』
中野『楽しみね』
ナレ ピザ釜でピザパーティをしたり五右衛門風呂に入ったりと中野は楽しんだ
〜〜囲炉裏〜〜
鳴島良文『どうですか?中野さん楽しめましたか?』
中野『なかなか良い雰囲気じゃない、
実は私、今いる会社の上司と付き合ってたの
相手は結婚しててね、、不倫だったわ、、
楽しかったけど、先週、不倫が奥さんにバレて怒り狂った奥さんがバリカンを持って私の髪を…』
ナレ 中野がカツラを取る
梵天彪雅『え?…』
鳴島良文『まさか!』
中野『そう、奥さんに丸坊主にされたの……
髪は女の命……楽しかった時間が終わって散った髪を見て私も終わりと思ったの……』
鳴島良文『それは流石に行き過ぎじゃ…』
中野『、、そうね、今となってはね、
でも、私は本気だった、死のうと思って会社の屋上から飛び降りようとした時、ビルの半地下で居酒屋をしていたコケシのマスターに』
〜〜某会社ビル屋上〜〜
1週間前
中野『……さようなら……ごめんね、お母さん……』
道山俊也『待ちな!……アンタが死のうがそれはアンタの自由だからいいけど、ここで潰れたトマトになられちゃあ、このビルで商売してる身としちゃあたまったもんじゃねぇいやい』
中野『ごめんなさい…』
ナレ 道山が胸元からタバコを出しライターで火をつけ、中野の近くに座る
道山俊也『…まぁ、人間なんて間違いなんてことは何度も起こす生き物さぁね…
でもな、その度に死んでたらキリねぇぜ、姉さん…』
道山俊也『ま、生きる気になって気が向いたら京都の綾部に綾部のチョモランマって呼ばれる秘境で変わった縁を繋ぐ古民家やってる鳴島って奴がいるから尋ねてみるといい、、、
きっと力になってくれるはずさ』
ナレ 道山がタバコをふかしながら屋上から去る
〜〜囲炉裏〜〜
現在
中野『マスターに言うとおり、ここに来てよかったわ』
鳴島良文『中野さん、私は特別なことはしてませんよ』
中野『何を言ってるの?この環境こそが特別なんだから……』
鳴島良文『え?』
中野『そりゃあ、ピザ釜とか囲炉裏とか五右衛門風呂とか都会の人間からすれば目を惹くような物はあるわよ…でも、結局はそこを運営してる貴方の人を救おうとする人間性じゃないかしら』
梵天彪雅『それは私もそう、思いますね
自分も前の会社で機械の整備してた中でハンマー投げられたり理不尽に蹴られたりして
本当、死のうと思ってた時期があって……
でも、ここ来て、鳴島さんの人を救おうとする世界を作る話を聞いて私頑張れましたから…』
中野『鳴島さん自信持っていいと思うわ』
中野『再び生きる活力が湧きました、有難うございます』
鳴島良文『こちらこそ、有難うございます』
2月22日
梵天彪雅『鳴島さん!鳴島さん!新聞見てください!』
鳴島良文『え!?どうしたの?そんなに慌てて💦』
梵天彪雅『ここの記事、鳴島さんのこと書いてありますよ‼️』
鳴島良文『え!? あ!』
ナレ 京都府綾部市の秘境に人が人らしく生きていける桃源郷シャングリラを作り人と人との縁を繋ぐ古民家コミニュティを作る鳴島良文さん(記者 中野)と書いてある。
鳴島良文『有難う』
完
本作はフィクションです。