乳海攪拌
乳海攪拌(にゅうかいかくはん)とは、ヒンドゥー教の天地創造神話です。日本の『古事記』の国生みに相当する話ですね。あるところに、神とアスラ(阿修羅)がいました。彼らは「アムリタ」という幻の霊薬を探し求めていました。アムリタを飲めば、不老不死になるといわれています。水銀を飲むよりもよほど健康的ですね。
アムリタがなかなか見つからないので、神とアスラはヴィシュヌに意見を求めました。ヴィシュヌは最高神として信仰されている「ど偉い神様」です。ヴィシュヌは、物欲しげな目で見つめる二人に対して「海をかき混ぜればアムリタができるみたいだよ」と言いました。クックパッドならぬクックゴッドでレシピを調べたのでしょう。マメだねぇ。
アムリタの作り方がわかったので、二人はしばしの間、協力し合うことにしました。『We Can Work It Out』でたとえるならば「Life is very short and there’s no time For fussing and fighting my friend」ということです。ただ引用したかっただけなのでは?Yes It Is.
海をかき混ぜるのは大事業なので、お互いに力を合わせなければなりません。ヴィシュヌは、クールマ(巨大な亀)に変身して協力してくれることになりました。ヴィシュヌは変身が得意なので、様々な形状で姿を現します。現世に生まれていたら、奇抜なコスプレイヤーになっていたことでしょう。写真撮影はもちろんNGです。
クールマの背中には「マンダラ山」という巨大な山を乗せます。山が棒になり、亀が土台になるわけです。そして、マンダラ山にヴァースキ(長大な蛇)を巻き付けます。ヴァースキは、綱としての役割を果たします。ちなみに、ヴァースキは婆素鶏(ばすけい)と音訳されます。アムリタ先生、婆素鶏が死体です!
三井寿が改心したところで、海をかき混ぜる準備が整いました。神とアスラが左右に分かれて、ヴァースキを力いっぱい引っ張ります。独楽を回す要領ですね。それにしても、ヴィシュヌの献身ぶりには頭が下がります。なぜこんなに体を張るのでしょうか。魚住純もドン引きするレベルです。シシューーーッ!!
海をかき混ぜることには成功しました。ですが、海の生物はすり潰されて、マンダラ山に棲む動物は焼け死んでしまいました。なんというか、戦には勝ったものの、辺り一帯が焼野原になってしまったという感じです。国破れて山河あり。ケツ破れて逆上がり。
するとそのとき、インドラがどこからともなく現れました。インドラは軍神として界隈では有名です。その有名な存在が山に水をかけて消火してくれました。インドラのフットワークの軽さに脱帽です。名前はインドアっぽいのに、行動は完全にアウトドアです。看板に偽りありですね。良い意味で期待を裏切られました。
インドラが山に水をかけたことによって、薬草のエキスが海に流れ込みました。言うなれば「生命の出汁」ですね。ヴァースキが口から毒(ハーラーハラ)を吐きましたが、シヴァがその毒を飲み干したので大惨事は免れました。周囲はハラハラしたでしょうね。井戸に毒を入れるケフカを彷彿とさせます。
そして1000年が経ちました。海からは様々なものがどんどん生まれてきます。ベビーラッシュですね。どさくさに紛れて、ダヌワンタリという神も姿を現しました。ダヌワンタリは、天界の医神です。言うなれば「善良なブラック・ジャック」ですね。アッチョンブリケよのさ!
ダヌワンタリがもたらしたアムリタを巡って、二人の争いが再燃しました。モノがモノだけに必死になるのは致し方ありません。アムリタ、ファイト!(byミスターうるち) ちなみに、アスラの頭上に浮かんでいる黒い物体はオレオです。言わずもがなですが「オレの!」というセリフとかけています。疲れたら甘いものを食べて糖分補給しましょう。
なんやかんやあった末に、神はアスラを打ち負かして、念願のアムリタを手に入れました。その恍惚の表情は、茹でたてのジャガイモのようにホックホクです。バター付きなら言うことはありません。そのままの勢いで昇天できそうですね。天使たちの送迎を待つまでもありません。赤ちゃんも神ちゃんも手がかからないのが良いです。持つべきものは、独立ゴッドですね。