世界で最も短い手紙
「世界で最も短い手紙」をご存知でしょうか。「俺はそもそも手紙なんぞ書かない。手紙を書かないから、短いも長いもない。あえて言うのであれば『無の手紙』を書くということになるのかな?」という意見もあるかもしれません。お客様から寄せられた御意見は、たとえどんなに些末で下品で取るに足らないクソみたいなものでも、しっかりと目を通させて頂きます。そして、裁断機の中に力任せに投げ入れて、その存在をまるごと消去させて頂きます。嗚呼、心の底から清々するなぁ!
クレーマーからの意見はさておき、世界で最も短い手紙として知られているのは、フランスの作家であるヴィクトル=ユーゴーが書いた手紙です。ユーゴーは、世界的な名作である『レ・ミゼラブル』を書いたことで知られています。レ・ミゼラブルは、フランスの歴史小説であり、1862年に出版されました。日本では1902年に『噫無情』(ああむじょう)というタイトルで発表されています。ちなみに、1986年には「あゝ無情」(ああむじょう)というタイトルの楽曲が発売されました。涙は塩っぱすぎるし、焼きもちは汚い。
焼きもちはさておき、ユーゴーは、レ・ミゼラブルが出版された後に海外旅行に出かけました。旅先で自著の売れ行きが気になったユーゴーは、出版社に電報を送りました。その電報の内容は「?」という一文字だけが書かれた最高にシンプルなものでした。「本の売り上げはどんな具合ですか?」という意味です。現代に例えると、文章を書かずに、絵文字だけのメールを送信するようなものですね。しばらくしてから、出版社から返信が届きました。その返信の内容は「!」という一文字だけが書かれたものでした。これは「安心して下さい!素晴らしい売れ行きですよ!」という意味です。出版社がユゴーに気を遣ったわけではなく、実際に上々の売り上げだったそうです。レ・ミゼラブル(惨め)とは正反対の好況ですね。