おとぼけ日記 その34
冬の寒さにも少しずつ慣れてきた頃、鍋をつつくことにも飽きてきた。
冷蔵庫に置いてある食材は鶏もも肉、玉ねぎ、人参のみという状態で、
買い出しに行くべきかどうか頭を悩ませていた。
「まあ、外に出るのも面倒だし、チキン南蛮でも作ろうか。」
まずは、鶏肉の下ごしらえから始める。皮をはいで、片栗粉を軽くまぶす。
そして、フライパンに油をしいてあげ焼きにする。
本来ならば、小麦粉をまぶして溶いた卵にくぐらせて後で油で揚げるものなのだが、
行程が長くなることだけはどうしても避けたいのだ。
それからタルタルソースを作っていく。
玉ねぎをみじん切りにして皿に移し、マヨネーズをたっぷりと、塩コショウを一振りする。
酢とケチャップでアクセントをつける。よし、できた。
揚げたての鶏肉の上にたっぷりとタルタルソース盛りつけて、
醤油、みりん、砂糖で作ったタレをかけたら出来上がり。
なのだが、これをチキン南蛮と呼んでいいのだろうか。
なにしろ、主役と言ってもいいはずの卵が一度も出てこないのだから。
これではただの、揚げ鳥の刻み玉ねぎマヨネーズ添えであろう。
鶏肉を揚げる際、手間がかかるために卵にくぐらせないと書いたが、
本当のことを言ってしまえば、私の好みの問題なのだ。
ああ、卵が食べられたならば、揚げ鳥の衣はより柔らかく、
タルタルソースも口当たりの良いものになっただろう。
これから歳を重ねていくなかで、卵を食べる喜びを見いだせる時が来た時には
読者のみなさんとよろこびを分かち合いたい。まあその時は訪れないかもしれないけれども。
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