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映画について書いたもの

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映画評や映画文化にまつわる文章。
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#映画はアリスから始まった

『映画はアリスから始まった』(監督:パメラ・B・グリーン)

すぐれたドキュメンタリー映画には、いくつかの種類があるように思うけれども、そのひとつに、映画を見た後、濃密な講義を受けたような感覚を憶えるものがある。まさに「教育映画」ということなのかもしれないが、それは単に「勉強になった」ということだけではない。今まで知らなかったことを知るスリリングさと、その後の世界が変わって見える驚きを与えるという点で、陳腐な言葉だが「感動的な映画」である。 映画の原題となった「Be Natural」を標語として自らのスタジオに掲げていたというアリス・

『NOPE/ノープ』(監督・脚本:ジョーダン・ピール)

まず、映像に関わる学芸職という立場を横に置いておくと実はこういうものが大好物で、だから擁護するということではないが、ホラー映画はそもそも社会派なのである。よって、ジョーダン・ピール監督を「社会派ホラーの名手」と評の冒頭で安易に書いてしまうようなことは決してするまい。 だが、ここまでの短いキャリアをもってして「サスペンス映画の名手」とは言っても差し支えないだろう。優れたサスペンス映画とは何かについては『サスペンス映画史』(著者:三浦哲哉/2012年)をお勧めするが、ごく簡潔に、