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映画について書いたもの

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映画評や映画文化にまつわる文章。
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#ドキュメンタリー映画

オリンピックと記録映画

河北新報夕刊「まちかどエッセー」に2021年7月から隔週で8回にわたり書いたもの。「河北新報オンライン」が会員制になったというのでここに再録する。 もちろん執筆時には『東京2020オリンピック』は観ていない。 (初出:河北新報夕刊「まちかどエッセー」2021年8月2日) すぐれたSFは未来の現実を先取りする。宮城出身の漫画家・映画監督の大友克洋が30年以上前に映画『AKIRA』(1998年)でそれを活写した、いわば想像力に先取りされていた東京オリンピック2020。スポーツ

『言語の向こうにあるもの』(監督:ニシノマドカ/2019年)

1990年代半ばに地方の国立大学に入学し、そこで語学の授業をとった身としては、正直なところ実際に見る前までさほど期待していなかった。フランスはパリの大学とはいえ「外国語としてのフランス語講座」なるものがそれほど魅力的なドキュメンタリー映画になるとは思えなかったからだ。 しかし、その予想は大きく外れる。まず、この授業がおそらく多くの日本人が想像する「語学の授業」からかけ離れたものであったから。それがこの映画の魅力の何割かであることは間違いないだろう。二人の教師(ニコールとフェ

「ヤマガタ」の名とともに映画は世界をめぐる

2006年に山形国際ドキュメンタリー映画祭がNPO法人化するにあたり、山形新聞が組んだ特集に寄稿したものである。この映画祭は、学校を卒業してすぐにせんだいメディアテークの仕事に就き、専門でもないのに上映会を企画しなくてはならなくなった私にとって、映画の先生の一人であったので、山形市が映画祭をNPO法人化すると決めたことへの批判を込めたつもりだった。 初出:山形新聞(2006年4月) 山形市の隣、仙台市にあるせんだいメディアテークでは、開館以来、山形国際ドキュメンタリー映画祭