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映画について書いたもの

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映画評や映画文化にまつわる文章。
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#日本映画

ケイコ 目を澄ませて (監督:三宅唱/2022年)

『コーダ あいのうた』(シアン・ヘダー監督/2021年)や『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督/2021年)がアカデミー賞を取ったこともあり、ろう者を描いた映画、そして、ろう者を演じること、ろう者が演じることについて、多くの人が関心を寄せられるようになった昨今。撮影や編集など映画的な技術だけでなく、福祉、マイノリティーや労働問題などさまざまな視点から批評されるであろう題材をどう撮るのだろうという興味と心配は正直あった。ただ、監督がインタビューで「ボクシング映画は既に数多く撮

『この子は邪悪』(監督・脚本:片岡翔/2022年)

予告編などを観ているとどうしても白いマスクをかぶった少女が目立つため、一定のシネフィルならば『顔のない眼』(1959年)を、そうでなくとも多くの日本人なら『犬神家の一族』(1967年、2006年)を思い起こすことだろうが、製作側がそれを意図したのかどうかはさておき、それはややミスリードであった。もちそんそれらも参照していることは間違いないだろうが、むしろ近年のものならジョーダン・ピールの『ゲット・アウト』(2017年)やヨルゴス・ランティモスの『ロブスター』(2015年)、あ