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映画について書いたもの

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映画評や映画文化にまつわる文章。
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#蓮實重彦

プチブルのひそかなたのしみ-凝視できない隣人を凝視するためのワイズマン-

この短い文章は、2002年5月30日付けのテキストファイルというだけで、何のために書いたのか思い出せない(思い出したら追記する)。しかし、当時せんだいメディアテークで企画した『映画への不実なる誘い』の打ち合わせか何かでお茶をご一緒しているとき、その講師である蓮實重彦氏からふと「あれ面白かったですよ」と言われたことだけは憶えているので、どこかに載ったものであることは間違いない。そして、たとえそれが社会人3年目になったばかり、映画をろくに知りもしないままの若造へのリップサービスだ

『NOPE/ノープ』(監督・脚本:ジョーダン・ピール)

まず、映像に関わる学芸職という立場を横に置いておくと実はこういうものが大好物で、だから擁護するということではないが、ホラー映画はそもそも社会派なのである。よって、ジョーダン・ピール監督を「社会派ホラーの名手」と評の冒頭で安易に書いてしまうようなことは決してするまい。 だが、ここまでの短いキャリアをもってして「サスペンス映画の名手」とは言っても差し支えないだろう。優れたサスペンス映画とは何かについては『サスペンス映画史』(著者:三浦哲哉/2012年)をお勧めするが、ごく簡潔に、