世界の名ボクサー:アーロン・プライアー①「猛打を振るう ”シンシナティの荒鷲”」
世界J・ウェルター級王者。荒っぽい攻撃。レオニダス・アスプリーリャ戦、アントニオ・セルバンテス戦、ガエタン・ハート戦、レノックス・ブラックモア戦を紹介します。
アーロン・プライアー(アメリカ)
身長169cm:オーソドックス(右構え)
①アーロン・プライアー 10R TKO レオニダス・アスプリーリャ
(J・ウェルター級戦、1980年)
(ダウンシーン)
3R:左フックでアスプリーリャがダウン
10R:左フックでアスプリーリャがスタンディングダウン
(感想:危険な強打者プライアー。「相手の出方など気にしない。一気に攻めて倒す」という信念を持つ。恐るべきタフネスと強打が売り物だった男だが、薬物問題もあった。その「打たれ強さ」が薬物によるものだったのかどうかは不明だが、正直なところ「ヤバくて微妙な選手」でもある。オハイオ州シンシナティ出身。両親は幼い頃に離婚。スポーツ好きな少年だったが、陸上ではスピード不足、バスケットボールやフットボールでは体格的に不利、ということでボクシングを選択。アマチュアで優秀な成績(タイトルを獲得したり、ライト級でトーマス・ハーンズに勝利したり。ハーンズ戦は後にプロでも見せるような「飽くなきラッシングパワー」による勝利だった)。しかし、ハワード・デービスに敗れてモントリオール・オリンピックには出場ならず(デービスは金メダル獲得)。プライアーの当初の計画では「オリンピックで金メダルを獲ってボクシングは終了。その後は穏やかに暮らす」というもの。それが叶わなかったため、プロへ。デビュー後に結婚。プロ入り後はKOの山を築き、これまで全勝(ただ、デビュー戦のファイトマネーは400ドル(と言われている)。カネにはあまり縁がないようで、マネージャーに搾取されたり、ロベルト・デュラン、シュガー・レイ・レナードとの大金を得られるビッグマッチを逃したり)。アスプリーリャ戦はプロ23戦目となる。アスプリーリャはコロンビア人。アマチュアで活躍し、プライアーが出場できなかったモントリオール・オリンピックにライト級で出場。ハワード・デービスに敗れてメダルは獲得できず。プロデビューから連勝だったが、WBAの地域王座戦(ライト級)で判定負け、初黒星。コロンビア王座、南米王座(ライト級)を獲得しているが、このところ二連続で引き分け(プライアー戦の直前の試合で引き分けたラファエル・ソリスは後、ヘクター・カマチョのWBC世界J・ライト級王座に挑戦してKO負け)。ミズーリ州カンザスシティでの一戦。非常に戦闘的なプライアー。左のガードをやや下げた構えからジャブ、ワンツー、接近して左右フック、アッパー。打たれてもひたすら攻めの姿勢。アスプリーリャは良い選手。右ストレート、左フックにキレがあり、一撃で相手を倒せるほど勢いもある。しかしながら、相手の攻勢もあってか、アスプリーリャは受け身の試合ぶり。3R、連打からの左フックでアスプリーリャがダウン。4R、フィニッシュしようと連打するプライアーだが、アスプリーリャは得意の右で反撃。一息つこうとプライアーはモハメド・アリばりの「フットワーク&ジャブ」。7R、左フックを食ってプライアーがピンチ。しかし、打たれれば打たれるほどプライアーは前進して連打し、その失点を挽回しようとする。10R、最後まで攻めの姿勢のプライアー。左フックでアスプリーリャにスタンディングカウントを聞かせる。再開後、連打でレフェリーストップ。プライアーが快勝。オリンピックの雪辱を果たしたかのような形の勝利。内容は「アーロン・プライアー」を象徴するような試合。ひたすら攻撃。打たれてもひるまず。最終ラウンドでもKOを目指す好戦的な姿勢。一方のアスプリーリャは対照的。優秀な選手であることは間違いないが、攻撃が単発。受け身の姿勢。中南米にはこういうタイプの選手が多い。攻めるが、攻め込まない。良いパンチを持っているにもかかわらず、攻めの姿勢に欠けて負けてしまう。アスプリーリャはその後、連敗。世界王座戦を経験することなくキャリアを終えた。)
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