世界の名ボクサー:マイク・タイソン⑦「強打の鉄人」

世界ヘビー級王者。史上最年少で頂点に。三団体統一戦、防衛戦。全盛期のトニー・タッカー戦、タイレル・ビッグス戦、ラリー・ホームズ戦、トニー・タッブス戦を紹介します。

マイク・タイソン(アメリカ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

①マイク・タイソン 12R 判定 トニー・タッカー
(WBA・WBC・IBF世界ヘビー級王座統一戦、1987年)
(感想:タイソンがタイトル統一。「真の世界ヘビー級王者を決めよう」というコンセプトで行われてきた「ヘビー級王座統一トーナメント」。本来ならばタイソンの相手はマイケル・スピンクスだった。ところがスピンクスはタイソン戦を避けるためトーナメントから離脱。大金が得られるゲーリー・クーニーと対戦し、KO勝利。スピンクスが返上した王座は「トニー・タッカー vs. ジェームズ・ダグラス」で争われ、タッカーがTKO勝利(「マイク・タイソン vs. ピンクロン・トーマス」のアンダーカードだった)。新IBF王者となったタッカー。何かと残念な選手。ミシガン州出身で、スラリとした長身。アマチュアボクサーだった父から戦い方を習い、アマで優秀な成績。モスクワ・オリンピック(1980年)に出場予定だったが、アメリカがオリンピックをボイコットしたため出場ならず。プロ転向し、「Tomorrow's Champions(明日の王者たち)」の一人として売り出されることになったが、なぜかややこしい契約関係になってしまいファイトへのモチベーションが上がらない状況。それでも無敗で世界王者に。大変な素質の持ち主であるが、どこかツイていないところが。タイソン戦は統一戦であり初防衛戦。一方のタイソン。世界最強になったが、これまで「マジメな好青年」というのが関係者による評価。しかし、勝つに連れて自我も大きくなっていったようで、この試合の前、素人を素手で殴ってケガをさせて訴えられてしまった(その後の挫折を暗示させる出来事)。ネバダ州「ラスベガス・ヒルトン」での一戦。1R、フットワーク&ジャブのタッカー。ワンツーからの左アッパーを決めてタイソンをたじろがせる。しかしながら、接近戦は避けたいようで距離を取ったり、クリンチしたり。タイソンはいつものようにジャブで前進し、ダッキングしながら左ボディ打ち。左フックに良いものがあるタッカーだが、右パンチの威力はもう一つ。タイソンもジェームス・スミス戦と同じようなパターン。攻めるがクリンチされて連打できない。6R、タイソンの右ストレートがヒット。タッカーは「効いていない」といったアピール。7R、タッカーが右腕を回したり、「かかってこい」のゼスチャーをし、11Rには「アリ・シャッフル」を披露。タイソンが押し気味のまま12R終了。判定は3-0。タイソンが強打&攻めの姿勢で勝利。あまりインパクトのない勝ち方だった。タッカーは虚しい敗北。腕を回したりといったアピールは勝っているときは格好良いかもしれないが、パッとしない試合をしているときにやると興ざめなもの。試合後、試合前から右手を痛めていたことを発表。どこまでもツキのない選手だ。その後のタッカー。ブランクを作りカムバックしたが、太った身体つき。「元世界王者」ということから何度も世界戦のチャンスをもらったが、レノックス・ルイス(WBC王者)、ブルース・セルドン(WBA王座決定戦)、ハービー・ハイド(WBO王座決定戦)に敗れ、王座返り咲きならず。複雑な契約などにより全盛期に本来の実力が出せなかったのが惜しまれる。)

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