世界の名ボクサー:マービン・ハグラー①「驚異的な世界ミドル級王者」

強打の統一世界ミドル級王者。世界王者になる前の試合。ボビー・ワッツ戦(初戦)、ユージン・ハート戦、ウィリー・モンロー戦、ダグ・デミングス戦を紹介します。

マービン・ハグラー(アメリカ)
身長177cm:スイッチヒッター(両構え)

①ボビー・ワッツ 10R 判定 マービン・ハグラー
(ミドル級戦、1976年)
(感想:ニュージャージー州ニューアーク出身のハグラー。6人兄弟の長男。父親はどこかへ消えた。彼が住むスラム街ではケンカは日常茶飯事。しかし、ハグラーはいつも素手で戦い(相手はナイフなどの武器を使う)、自分から争いを仕掛けたりしたことはなかったという。周辺の環境が悪すぎるため、ハグラーの母は子供たちを連れてマサチューセッツ州へ(弟ロビー・シムスもボクサーに。親が離婚したため、兄弟で名前が違う)。フロイド・パターソン(元世界ヘビー級王者)に憧れを持っていたところ、イタリア系のペトロネーリ兄弟と出会う(兄弟はあのロッキー・マルシアノと友人関係。三人で世界王者を育てようと誓い合ったことがある)。兄弟の指導でボクシングを始め、アマチュアで活躍(タイトルも獲得)。プロ転向。引き分けたこともあるが、強打で連戦連勝。これまで無敗。ワッツはサウスカロライナ出身で、住居はフィラデルフィア。王座戦の経験はないが、ユージン・ハート、ウィリー・モンローらに勝利してきた。フィラデルフィアでの一戦。レフェリーは縞のシャツ(「いかにもレフェリー」といった姿)。サウスポースタイルで前進するハグラー。右ジャブ、左ストレート。ワッツは足を使いながらジャブ、ワンツー。接近戦を避けたいワッツはクリンチ、ホールド。前に出るハグラーだが決定打を打ち込むことができず、逆に右カウンターをもらう(5Rほか)。7R、ハグラーが右フック、左ストレートで優勢。しかし、詰めきれず、判定は2-0。ボクシングでありがちな「攻めている方がカウンターを食って負ける」というパターンだった試合。ワッツの地元での試合だったというのもあるかもしれないが、やはり決定打に欠けたのがハグラーの敗因ではないかと。後にシュガー・レイ・レナードがやったパターンで勝利したワッツ。「勝った」と言うより「うまくやった」といった感じの試合ぶりだった。)

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