世界の名ボクサー:シュガー・レイ・レナード⑥「超特急と呼ばれた男」

80年代のスター。世界5階級制覇王者。強敵との世界戦。ロベルト・デュラン戦(再戦)、ラリー・ボンズ戦、アユブ・カルレ戦、トーマス・ハーンズ戦(初戦)を紹介します。

シュガー・レイ・レナード(アメリカ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

①シュガー・レイ・レナード 8R TKO ロベルト・デュラン
(WBC世界ウェルター級タイトル戦、1980年)
(感想:レナードがタイトル奪回。因縁の再戦(いわゆる「ダイレクト・リマッチ」。本来、世界戦でのダイレクト・リマッチは認められないが(同じ選手同士で何度も戦うことによって他の選手がチャンスを得られないことを防止するため)、今回は「特例」として承認された)。前回、デュランの「突貫ファイト(体ごとぶつかってくるかのような荒いファイト)」にしてやられたレナード。今回はそういうタイプの選手とスパーリングをタップリこなしてリングインしたという。ニューオリンズ「スーパードーム」での一戦。足でリズムを取るレナード。徹底的に相手と距離を取ってジャブ、右ストレート。デュランは前に出るが、逃げられて空転。接近戦を避けたいレナード。連打して距離を取ったり、クリンチしたり。ジャブ、右のカウンターでポイントを取っている印象ではあるが、5Rには滑って転倒したり、6Rにはつまづいたり。試合の流れを作るのはレナード。ボディにジャブを打ち、7Rには右腕をぐるぐる回すパフォーマンス。8R、デュランが突然、棄権。両手を上げて喜ぶレナード。レフェリーはデュランにファイトをうながすが、デュランは試合放棄。レナードが徹底したアウトボクシングで勝利。デュランは試合後、「腹が痙攣を起こした」「もう引退する(しばらくして撤回)」とコメントし、後に「意図的に試合を放棄した」という理由で罰金を科せられた。一方、勝利したレナードは「ボディ打ちが功を奏した」「不可解な結末ではない」という認識。実際、ボディで選手が棄権するのはよくあること。ただ、この試合の場合は「その瞬間」までは普通にファイトが行われており、棄権に追い込むほどの激しいボディ打ちがあったようには見られなかったことから「スキャダラスな結末」と当時は認識された。王座を奪回できたレナードだが、興行的には思ったほど収益を上げられなかったという。)

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