世界の名ボクサー:東京ドームでの大番狂わせ「タイソン vs. ダグラス」

今でも語られる「伝説の試合」。無敵の世界ヘビー級王者マイク・タイソンがKOで初黒星。試合の前後、試合内容について紹介します。

①1989年7月21日
WBA・WBC・IBF世界ヘビー級王者マイク・タイソン(23歳)がカール・ウィリアムスと防衛戦。ウィリアムスは打たれ弱さはあるが、長身のアウトボクサー。かつてラリー・ホームズがIBF王者だった時に挑戦して判定負け。タイソンへの挑戦は二度目の世界挑戦となる。前回の防衛戦でタイソンは英国のフランク・ブルーノに苦戦。長身のウィリアムスは小柄なタイソン攻略に自信。しかし、1Rに左フック一発でタイソンがレフェリーストップ勝ち。あまりにもあっけない結末に客席からブーイング。「タイソン人気」に陰りが。その少し前の7月15日。タイソンを狙うイベンダー・ホリフィールドがアディルソン・ロドリゲス(ブラジル)を完璧にKO。最早、タイソンとマトモに戦えるのはホリフィールドしかいない、といった状況に。

②トラブル
ウィリアムス戦後のタイソン。様々な出来事。元世界ライトヘビー級王者ホセ・トーレスがタイソンを非難する暴露本を出版(トーレスはカス・ダマトの弟子。タイソンもまたダマトの指導を受けた過去。タイソンにとってトーレスは「兄弟子」にあたる)。プロモーターのドン・キングはビル・ケイトン(タイソンのマネージャー)からタイソンを奪おうと画策。キングとしては自らタイソンをプロモートして莫大なマネーを稼ぎたいが、そのためにはケイトンは邪魔な存在。大金が得られること間違いなしの「タイソン vs. ホリフィールド」は自分が仕切りたい。タイソンとケイトンの契約が残っているうちは「タイソン vs. ホリフィールド」を実現させたくない、というのがキングの考え。タイソンの「次の防衛戦の相手」として元WBA王者マイケル・ドークス、ジェームス・ダグラスが浮上したが、カナダのドノバン・ラドックに決定。試合地はカナダ。タイソンのアメリカでの興行成績が落ちている事情もあり、入札により敵地での試合になった。

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