世界の名ボクサー:トーマス・ヒットマン・ハーンズ⑧「デトロイトの暗殺者」

80年代のスター。世界5階級制覇王者。挑戦&因縁の再戦。マイケル・オラジデ戦、ケンバー・モートン戦、バージル・ヒル戦、アイラン・バークレー戦(再戦)を紹介します。

トーマス・ハーンズ(アメリカ)
身長185cm:オーソドックス(右構え)

①トーマス・ハーンズ 12R 判定 マイケル・オラジデ
(WBO世界スーパーミドル級タイトル戦、1990年)
(ダウンシーン)
9R:ワンツーでオラジデがダウン
(感想:ハーンズがタイトル初防衛。シュガー・レイ・レナードのWBC世界S・ミドル級王座に挑戦して引き分けたハーンズ(46勝(38KO)3敗1分)。「分のいい引き分け」ではあったが、またしてもレナードに勝てなかった。そして、WBO王座の初防衛戦。これまで27勝(19KO)2敗の挑戦者オラジデ(WBC世界ミドル級7位)はカナダの黒人で「リングのマイケル・ジャクソン」と呼ばれる個性派。ナイジェリア人で元ボクサーの父からボクシングを習い、アマチュアからプロへ。地元カナダを中心にキレイに白星を並べ、カーチス・パーカー、ジェームズ・グリーン、デンジャラス・ドン・リーを撃破。しかし、フランク・テートとのIBF世界ミドル級王座決定戦に判定で敗れ、初黒星。アイラン・バークレー、デニス・ミルトン(後、世界挑戦)にも敗れてしまった。ハーンズ戦はミルトンに敗れた再起戦となるが、試合前、オラジデは「ハーンズの引き立て役になるつもりはない」。アトランチックシティでの一戦(リングサイドでレナードが観戦)。髪を短くしたオラジデ(「髪が長いとパンチが当たったときに揺れて、より劣勢に見えるから」というのが髪を切った理由らしい)。セコンドにはあのアンジェロ・ダンディ(モハメド・アリ、レナードのセコンドを長年担当した)。ハーンズにはおなじみエマヌエル・スチュワード(「クロンクジム」オーナー)。ハーンズが左のテクニックを見せる。軽快なフットワーク&左ジャブ、左ボディ打ち。オラジデは足を使って距離を取る作戦。ジャブを出すが、ストレートは少な目。攻めないオラジデに対し、ハーンズは長い左腕を大きく動かしたり、ノーガードになったりしてオラジデを誘うが効果無し。9R、速いワンツーでガードの間を貫かれてオラジデがダウン。ラッシュするハーンズにオラジデは左ボディ打ち(なかなか良い打ち方だった)で応戦。終盤は足を使って受け身になるハーンズ。オラジデは前に出るが、詰められず。12R終了。判定は3-0。ジャブを打ち合った試合。ダウンを奪ったハーンズのワンツーはさすがだったが、共に右パンチがイマイチだった。右拳の調子が万全ではないハーンズ。攻めない挑戦者オラジデ。当時WBOは設立されて間もない「マイナー王座」。その価値に見合うような試合レベルだった印象。試合後、ハーンズは会場のレナードに第三戦を呼びかけたが、レナードは試合が終わってすぐに会場を去ったらしい。オラジデは次の試合にも敗れて、リングを去った。)

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