文章生成言語モデルGPT3を活用するスタートアップ5社
この数年、GPT3(文章生成言語モデル)を活用するスタートアップが次々と誕生しています。GPT3とは、個別の学習データを必要とせずに文章を生成するテクノロジーで、以前MIT(マサチューセッツ工科大学)から発表された2021年に躍進する10大テクノロジーでも紹介しました。今回は改めてその概要や開発した組織であるOpenAI、そしてGPT3を活用したスタートアップについて解説をします。
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GPT3とは
GPT(Generative Pre-trained Transformer)はAIを研究する非営利団体のOpenAIが開発した文章生成言語モデルで、GPT3は3代目のバージョンです。インターネット上のテキストや何千もの書籍のテキストを学習することで、入力されたキーワードや文に応じて次に出るべき適切な文章を予測して提示します。
GPT3の実証実験で公開されたアプリを作成する事例では、作りたいアプリのキーワードを入力するだけで、GPT3がプログラミング言語を入力して数秒でアプリを作成しました。ただし、膨大な計算能力を必要とすることやインターネット上で人が書いた文書も学習することで、一定のバイアスがかかってしまうなど注意する点もあります。
GPTを開発したOpneAIはElon MuskやY Combinatorの前社長Sam Altmanなどが2015年に創業した非営利団体で、ほかにも画像の半分を取り入れると残りの画像を生成するImage GPTや、GPT3技術をベースにプログラミングコード生成により特化したコード自動生成モデルのCodexなどを開発しています(Elon Muskは2018年に幹部職を退任)。
OpenAIは2019年にMicrosoftから$1B(約1,100億円)の出資を受け、さらに2021年5月にはMicrosoftのノーコード開発ツールPower AppsへのGPT3の活用した機能を発表しました。また同じく2021年5月には、OpenAIが運営するファンドが組成され、スタートアップ向けの支援を開始。ファンドの資金$100M(約110億円)はMicrosoftやその他OpenAIのパートナー企業からの出資で調達しました。
GPT3技術を活用した北米スタートアップ
ここからは実際にGPT3技術を活用する北米のスタートアップ5社を紹介したいと思います。
1 メッセージ自動作成ツールのCompose.AI
Compose.AIは文字を入力すると過去のキーボード入力履歴を学習して候補の一覧を表示してくれるメッセージ自動作成ツールで、メール、Slack、Asanaなど様々なツールと連携することができます。ユーザーの文体を学習するため、提案されるメッセージはその人らしい内容になるのが特徴です。日々メールやSlackなどをよく使う人は、Compose.AIを活用することでやり取りを効率化できるかもしれません。プレミアムプランは月額約1,000円から利用可能で、一部の機能のみ使えるフリープランも用意されています。
設立年 2020年
所在地 カリフォルニア州サンフランシスコ
従業員 1-10
創設者 Michael Shuffett(Founder & CEO)
資金調達 $2.1(約2.3億円)
VC Microsoft、Y Combinator、Khosla Ventures
URL https://openai.com/
※crunchbaseデータベース参照
2 商品説明やブログの文章を自動作成するCopy.ai
Copy.aiはEコマース内の商品説明、FacebookやGoogleなどのデジタル広告コピー、ブログコンテンツなどを自動生成するツールです。例えば商品説明文を作りたい場合、短い説明を入力するとCopy.aiがそれに合った文章を複数提案してくれるため、デジタルマーケターが表現や言い回しなどを考える時間や手間を短縮することができます。ブログコンテンツも自動生成してくれるため、私が今書いているような記事も将来的にCopy.aiが生成した文章に手を加えることになるかもしれません。
機能制限付きで7日間のフリートライアルが用意されており、その後月額約3,900円で利用可能です。
Copy.aiのデモ画面。短い説明を入力すると説明文を複数提案してくれる(Copy.ai公式ウェブサイトから引用)
設立年 2020年
所在地 テネシー州メンフィス
従業員 1-10
創設者 Paul Yacoubian(Co-Founder&CEO)
資金調達 $2.9M(約3.2億円)シード
VC Craft Ventures
URL https://www.copy.ai/
※crunchbaseデータベース参照
3 顧客向けメッセージ自動生成ツールのSaplingAI
SaplingAIはセールス、カスタマーサクセス、サポートの業務効率化をサポートするツールで、顧客ごとにパーソナライズした返信メッセージを自動生成します。メッセージのやりとりから想定される返信メッセージを事前に作成するほか、自身で作成したメッセージの文章チェックをしてくれる機能も備えています。Salesforce、Zendesk、ServiceNowなど、チームでよく使うプラットフォームと連携可能です。
Servicenow上でメッセージを作成する様子。赤枠部分がSaplingAIによって自動で提案された文(SaplingAI公式ウェブサイトより引用)
設立年 2018年
所在地 カリフォルニア州サンフランシスコ
従業員 1-10
創設者 Ziang Xie(CEO)
資金調達 $150K(約0.6億円)シード
VC Y Combinator
URL https://sapling.ai/
※crunchbaseデータベース参照
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4 メンタルヘルスのチャットボットKoKo
KoKoが提供するチャットボットは従来の機械的なやりとりをするものではなく、相手に幸福感を与えるメッセージを返信するというものです。メンタルヘルス領域での活用が期待され、ハーバード大学やスタンフォード大学などと連携し自殺防止や心理学などの研究で活用されていました。2018年に民泊プラットフォームを提供するAirbnbに買収されExitしました。
設立年 2015年
所在地 ニューヨーク州ニューヨーク
従業員 1-10
創設者 Fraser Kelton(Co-Founder&CEO)
資金調達 $2.5M(約2.7億円)2018年にAirbnbに買収されExit
VC Omidyar Network、Union Square Venturesなど
URL https://www.koko.ai/
※crunchbaseデータベース参照
5 法務領域特化のスタートアップROSS Intelligence
ROSS Intelligenceは法務領域に特化し、自然言語で質問すると膨大かつ複雑な法律関連の情報の中から回答を見つけるほか、長くて複雑な文章の要約を作成する機能を提供します。もともとはIBMの人口知能Watsonを活用していましたが、ソリューション精度の向上を目指して2020年6月にOpenAIと連携しました。
設立年 2014年
所在地 カリフォルニア州サンフランシスコ
従業員 11-50
創設者 Jimoh Ovbiagele(Founder&CTO)
資金調達 $13.1M(約14億円)
VC Sea and Sand Foundation、Inovia Capital、Y Combinatorなど
URL https://rossintelligence.com/features
※crunchbaseデータベース参照
注目ポイント
GPT3の活用領域は多岐にわたりますが、まずは仕事の生産性向上を目的として、Compose.AIのようなメール文章の自動生成などが使われていくでしょう。それが劇的な業務効率化に繋がる可能性は低いとは思いますが、メール対応の時間を10%減らせるだけでも利用する価値はありそうです。
またOpenAIが開発するコード自動生成モデルのCodexも注目ポイントです。先日のCrunchbaseの記事では、スタートアップ業界のバズワードでプログラミングコードの知識がなくともアプリを作成できる「ノーコード」が1位に選ばれていましたが、Codexがより発展していくことで、ノーコードも一気に過去のテクノロジーになるかもしれません。
まだまだ課題も多いGPT3ですが、近い将来、様々な業界に大きなインパクトを与えることは間違いないでしょう。
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