おしまいってのは、うそでした

少し前まで好きだった化粧が、嫌いになってしまった。
学生の身というものもあり忙しく、薄付きと言えばそうであったが、それでも少し強くなれたような気がするから、化粧が大好きだった。
ふと鏡を見た時に、ラメが光るのが好きだった。
僕の父は、やはり昭和の人で、近頃のLGBT(僕はここには含まれないけど)の話とかを受け入れられないみたい。
僕はこの体のことは嫌いだけど、化粧ということ自体は好きでいられた。
「なんか、化粧もするってずるいな」と父に言われてからと言うものの、僕はメイクアップブラシを握る手が震えるようになった。

長い間ボブをキープしていたのを、ずっとずっと、バッサリ切った。
男の子みたいだと言われて嬉しかった。

先日、髪を切ってから初めて化粧をした。
普段から眉毛や涙袋をかいてはいるが、それも2分程度で終わる。
久々に開いたアイシャドウパレットは、僕が八つ当たりした時の惨状のままだった。
ぼろぼろに割れたラメがズボンに落ちて、嫌な気持ちになった。
もう、ダメなんだと思った。
僕は男の子にはなれない。
でも、もう、女の子ですら居られない。
なんて、なんて幸せなんだろう。
そう思わないと、気が狂ってしまいそうだった。

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