32歳でラップをやってしまった男の2016年の記録③<調子が悪くなってきたころ・実力者との闘い>
②はここから https://note.mu/notinservicerap/n/n3311cfa06dcf)
ラッキーパンチによるジャイアントキリング、さらにBEST4と調子づいてしまったが、そこからはうまくいかない感じだった。
どんどんBRTの開催の規模がでかくなり、CUBE→HARLEM→agehaと、規模を増していった。自分はBRTの金回りがわからなくて、エントリーだけでここまでagehaに立ててしまうのに、なんともいえない不安を感じた。
クラブイベントのオーガナイザーとして、ハーレムやアゲハどころか、NEOやBATICAでも完全満員にすることができない自分としては、やはり、これはバトルブームなんだな、と思うほかなかった。
そんなことを考えながら、自分のクラブイベント「king of pop」の宣伝も兼ねて、いろいろなクラブにフライヤーを置いてもらっていたとき、渋谷のDimentionで行われていた「ラップ酒場」にお邪魔した。そこで対戦したのは、ひょっこりといたMC KUREIだった。
t-pablowとフリースタイルダンジョンで対戦したこともあるラッパーとひょっこり対戦してしまった俺。バトル自体出るつもりもなかったが、LADDDだったり、俺がラップする前から、ラップをずっとやっていた、元会社の同期、山口兄弟のタモングチヤマもいた。タモンはバトルはちょっと…っていうタイプのラッパーで、むしろ音源に今は精力を注いでるから、こんな場所でバトルに出ているのは意外だった。
威勢よく攻め込んだ気がした。しかし、きれいに丸め込まれるように話をされ、かつ、場内のプロップス(あまり言いたくもないが、確実にある)もKUREIを応援していた。結果はKUREIに負け、2回戦で消える。まあ、結構アットホームな大会だったが、最後に宣伝でも…とマイクを使った瞬間
「おい!宣伝!?そんなことはさせねえぞ!負けた奴は去れ!」
「うちはそういう甲子園ルールだ!」
と、その場のオーガナイザーの丸省というラッパーに怒鳴られた。
かなりBADな気分になったが、そういう場所なのだろうと、すごすごとその場所を後にした。負けよりも、そのラップのクラブの厳しい掟の存在に食らった一日だったのをよく覚えている。
そして、次は、ついに俺も社会人MCバトルではなく、普通のMCバトルに挑戦してみた。戦極MCバトルの全国予選だ。
結果は2回戦負け。BEROというラッパーに、後攻をとったものの(案外スキルどうこうじゃなく話の揚げ足をとって勝てるのは後攻だ。MCバトルでも、基本後攻が有利という定説がある)、KUREIと同じく非常にうまい話の返しで、反論できずに負けてしまった。頭の回転がたりなかったし、そもそもBEROではなく別の方が2回戦にあがってきていると勘違いし、そいつの名前用の韻を考えていたような気もする。その後BEROはベスト8か4まであがり、存在感を示した。
「栃木にSAMとMAKAがいるなら、俺も負けてはいられない」
と未来に期待できるBEROのライムも覚えている。
負けも混んできたところで、BRTの主催MAD BENNから、青学でBRTをやるんだけれどもでないか?と言われ、二つ返事で了承した。そして、ここでついに俺は、あのBOZさんと戦うことになる。
https://www.youtube.com/watch?v=H2lqhqkVB8c&t=54s
結果は敗北。自分のRAPにも身が入っていないし、まあ、しっかり話をおとせずしどろもどっているところが一瞬でも見えたらMCバトルは終わりである。格上の相手に勝てるはずはないのだ。
次のBRTはageha。初めて賞金の出るバトルだったが、ここでも、絶対に負けないと思っていた社会人ラッパーに負けてしまう。結果はベスト8。これも後攻なのに負けて悔しかった。
ここらへんでいよいよ負けがかさむなか、ついにBRTはagehaでハロウィーンイベントまで行うようになった。しかも今回は、MAD BENNはどうやったか知らないが、ベスト4までいけば、MCニガリ、晋平太、rude-α、MR.Qといった凄腕MCと戦えるというのだ…。俺と、映画技師をやっているnoisy、そして、次の章で紹介する、うちの劇団員yascoも参加し、平日月曜のオールナイトだというのに新木場まで出張ってきた。
このバトルはよかった。ニガリを意識しつつ、仲の良いnoisyのメンツをつぶさず、勝てた。しかし、がっつり意気込んでいたことは裏目になってしまった。
このバトルが動画に出ることなんてわかっていたはずなのに、非常に不甲斐無い負け方をしている。2ヴァース目以降の何言ってるか不明な感じが見るに堪えがたい。そういえば、自分は役者でもよく何言ってるかわからない、といわれるくらい、滑舌が悪いのだった。非常に悔しかったのを覚えている。ここで彼を倒せれば、何かしらさざ波が立つ気すらしていた。実際、ここで社会人ラッパーは全員MCニガリ、晋平太、rude-αに倒されてしまう。
その後他の動画も出て、youtubeのコメント欄で叩かれるなんて経験をするわけだが、32歳でもきついんだから若いラッパーはいかほどだろう。それだけでラップをやめたくなってしまうんじゃなかろうか。今の、表現をやる子たちは、最初からいわゆる「ヘイター」との闘いなんだろう。
俺は負けてもふがいなく、ぶつぶつnoisyに言い訳を言いながらagehaのシャトルバスで帰った気がする。その後の想像を絶する悔しい負けがあるともしらずに。
それは、次のUMB×BRT@新木場ageha、なんとBRTの優勝者が一人、日本一のMCを決めるMCバトルのひとつ、UMBの本戦に出場するというトーナメントだ。
俺はここで、初めての一回戦負けを経験する。相手のshow the no1は、完全に酔っぱらっていた。しかし、経験豊かなラッパーだった。
このBRT×UMBは、非常にピリピリした側面を持っていた。
「なんで社会人ラッパーなんかが本戦にあがれるんだ」
ということをTweetし、実際バトルでしゃべるラッパーたちも存在した。
俺もかなり複雑な気分でバトルに挑んだことを覚えている。
ここらへんは最後にでも語りたい。
このとき自分は「HEIANMCZ」の脚本も完成しておらず、そのうしろめたさもあり、精神はくしゃっとなってしまい、タクシーで新木場からすぐ渋谷へトンボ帰りした。一刻もはやくここから出たかった。1万円以上かかった。なぜシャトルバスを使わなかったのか。それはそのときの俺に聞かないとわからない。たぶん「めんどくせー」ってことなんだろう。
結局この大会は、BOZさんの優勝で、円満解決を得た。
そのあと俺はバトルの場所に立っていない。脚本を書くことに集中し、
脚本は11月後半に完成した。
やや浮足立ってきた俺を蹴落とすように、矢継ぎ早に現れた実力者バトルMC。
BOZ、MCKUREI、BERO、rude-α、show the no.1…。
ともにフリースタイルダンジョンにも出るような、出てもおかしくないMCたち。だが、裏を返せば、こんな、ラップ始めたてのおっさんでも、
(音楽好きであれば)あんなスター選手と戦えるってことだ。
そしてそれは勿論芝居にも意味はあった。7日は、MU KUREIがゲストラッパーとして出演してくれる。
<HEIAN MCZ 予約はこちらから>
http://teiji-zangyo-z.main.jp/heian-mcz/