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伝えられなかった想いでぼくたちはできている

最近、Netflixに加入して映画やアニメをたくさん観ている。

ぼくたちはコロナ禍によって、人との交流や移動の機会を奪われた。誰かと会うことは減り、知らない土地に行ってインスピレーションを感じる機会もなくなった。人生でこれまで得られていた経験が、急に剥奪されてしまったのだ。ぼくは、“これまで”を忘れないように映画やアニメを観ている。体験質(クオリア)を担保するため、とも言えるかもしれない。

そのなかでも、ヴァイオレット・エヴァーガーデンを取り上げたい。ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、暁佳奈による小説であり、それを原作とするアニメーション作品が出された。イラストは高瀬亜貴子が手掛けており、KAエスマ文庫(京都アニメーション)より2015年12月から刊行されている。

物語のあらすじはこうだ。4年間にわたる東西南北による大陸戦争が終結。その戦場で「武器」として戦うことしか知らなかった少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンが主人公だ。

ヴァイオレットには、かつて戦場で誰よりも大切な人・ギルベルト少佐がいた。最後に聞かされた「愛してる」という言葉が理解できなかった彼女は、仕事と日常を通じて人と触れ合いながら、その言葉の意味を探していく。

物語の序盤では、想ったことや考えたことを無骨に口に出してしまうことで、誰かの反感を買ってしまうヴァイオレットが滑稽さをもって映し出される。一方で、ほんとうは伝えたい真心を打ち明けることができない人間と対比された形でヴァイオレットは描かれている。恥ずかしさやプライドが邪魔をして、ほんとうのことを言えないぼくたちに、ヴァイオレットは大切なことを伝えてくれている。

ぼくたちは、1日のなかでどれだけ本音で生きることができているだろうか。あるいは、本音で生きないことによって、どれだけ心を消耗しているだろうか。あの日あのとき、伝えておけばよかったと後悔していたりしないだろうか。

ぼくたちはどうしてか、自分に嘘をつき、そんな真正でない自分をもって誰かと接し、相手にも嘘をついている。自分についた嘘は鬱憤として、しんしんと降る雪のように、心の奥底に積もっていく。そして、心は悴み、感じることができなくなって、いつかは置き去りにされてしまう。心が置き去りにされた結果、誰ともほんとうの意味で繋がれずにいる。

ぼくたちは、伝えられなかった想いでできている。

いつか、ぼくもヴァイオレットのように、心の内を打ち明けることができるだろうか。そして、ほんとうの人との繋がりを取り戻すことができるだろうか。いつか勇気をもってトライしてみたい。ヴァイオレットの、無骨さを取り除いたカタチで。

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