『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 19
ボダナート
焼かれて灰になった遺体がバグマティ川に流されるのを見届けたあと、ぼくはパシュパティナートの北にあるボダナートへと向かった。さすがに足取り軽くというわけにもいかず、とりあえず元気を出すために、昼ご飯を食べることにした。山の上に比べれば、カトマンズのダルバートはかなり美味しい。…しかし、出されたダルバートとトゥクパ(そばみたいなの)は、どうがんばっても全部を食べることはできなかった。
ぼくは、3日前に夕食を共にしたKさんの言っていたことを思い出していた。「ぼくら旅行者って、色々見たくなってつい歩き回ってしまうけど、自分が止まっていても周りは動いているんだよね。止まることで見えてくるものってあるような気がするんだ。」ぼくは、ボダナートのストゥーバの中段に腰掛け、それからの午後の時間帯を、ぼんやりと人を眺めて過ごしていた。
2時間ほどたったか、身体が冷えてきて、もう帰ろうかと思い始めた頃だ。「日本から来たの?」と、隣に座った地元の青年が話しかけてきたのは。
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