『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 6
2日目 パグディン(2610m)→ ナムチェバザール(3440m)
翌朝、冬のひんやりした空気の中を、次なる目的地ナムチェバザールまで歩く。途中、谷底の氷河の下流(ドゥードゥ=コシ)を渡るため、大きな釣り橋を渡るのだが、高くて細くて揺れる吊り橋の足元では、ところどころ踏み板が外れていたりするのだ。
ナムチェバザールは、その名の通り交易の場所だ。ぼくがそこに着いたとき、そこにはちょうどチベットから国境線を越えて来た商人たちが市(いち)を開いていた。見事な値打ちのあるチベタンカーペットがあるかと思えば、どう見てもニセモノと思われる “NORTH FACE” のタグが着いたフシギな形のフリースが堂々と売られていたりもした。
その夜、巨大なヒマラヤの白い峰々に見守られながら、また夜を迎えた。高度が高くなり、冬の高地はかなり冷える。ついにストーブに火が入った。むかしなつかしいだるまストーブだ。でも、この燃料は石炭じゃないなぁ、なんだろコレ。おかみさんが運んでくるその「固形燃料」は、水で濡れるとかすかにうん○の香りがした。そう、貴重なその「固形燃料」は、各家庭の家畜であるヤクやゾッキョのフンを乾燥させたものなのだ。燃え方はやや物足りない感じがするけれど、それは、ゆっくり、着実に、冷え切ったぼくらの身体をあたためてくれたわけなのである。