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『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 16

 カトマンズに帰ってきて最初に行ったのは、宿の近くの食堂だ。山に行く前にも食べたそこのダルバートは、以前よりはるかにおいしく感じられた。しかし、店員さんの反応がおかしい。なぜだろう。やっぱり日焼けして髭もぼうぼうで人相変わったかな…。いや、そうじゃない、「俺は臭いのだ! それもとてつもなく」。はやくシャワーを浴びなくては! おいしい食事の満足もそこそこに、僕は宿へと急いだ。

 人は果たして何日のあいだ、体を洗わずにいられるのだろうか? たぶんはっきりとした限界などない。山は寒かったからか、ずっと同じ服を着て(軽量化のため、下着も靴下も2組だけ)、寝ても起きてもそれを着っぱなしという生活だったが、さほど不快感はなかった。だがしかし、頭はそうはいかない。20日近くも髪を洗わないというのは、そうとうにつらい。なんといっても、かゆい。ひたすらにかゆい。そのかゆみのピークは、だいたい3日目くらいにくる。この3日という日数は、日本の山を泊まりで歩くときの標準的な期間なので、それほどうろたえることはないのだが、これを過ぎてからの頭のかゆみというのは尋常ではない。もうひたすらに掻きまくったって、かゆいものはかゆいのだ。はい、真夏に大量の蚊に頭をおそわれたと思ってください。だから、その「かゆみは無かったことにする」のが得策であります。

 さて、宿に帰った僕は、早速シャワーを浴びた。5回くらいシャンプーをした。お湯が黒くなった。石けんで体を洗った。あかすりをしたわけでもないのに、信じられないくらいの垢(あか)がでた。次は洗濯である。日本から持ってきた「アタック」のジップロック詰めが心強い。とりあえずたっぷりのお湯に洗剤を溶かし、着ていたものを浸してみると、見る間にお湯は焦げ茶色に変わっていくのでありました。

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