終焉
陽子は死にたいと思っていました。
それは人間は死なないからです。
23世紀の現在、人類は死ぬことがなくなりました。
不老不死を手に入れたのです。
もちろん死にたい人には安楽死という選択が用意されていました。
だから死にたければいつでも死ぬことができました。
陽子にはやりたいことがありません。
そしてそれは永遠に終わらない。
人生が終わらないから、やることがない人生もいつまでも続くのです。
そんな人生に何の楽しみがある。
だから陽子は死にたかったのです。
陽子は過去に想いを馳せます。
21世紀、人は死ぬのが当たり前だった。
その時代、人には終わりがあったからこそ、人々は人生を大切にし、謳歌していたのではないだろうか。
23世紀はどうだ。
死という終わりがなくなったから、人々は退廃しているように見える。
永遠の命は人々を堕落させた。
草木にも動物にも終わりがある。
生命は短いからこそ必死で生きる。
だから終焉がないところに真の生命の輝きはない。
陽子はそう考えていました。
そして陽子は死ぬ日を決めました。
「30日後に死のう。」
その日から陽子は色々な人に会っては話をし、色々なところに出掛けた。
寝る間を惜しんで、目に耳に頭にその全てを焼き付けた。
30日後、陽子は無事に死を迎えた。
人々は言った。
「今まで見た陽子の顔の中で、今日が一番幸せそうだ。」と。
陽子は喜んでその人生を終えたのだった。
#健康 #生活 #日記 #コラム #エッセイ #エッセー #写真 #イラスト #小説 #漫画 #エアーマン #ノート #人生 #運命 #死 #安楽死
いいなと思ったら応援しよう!
ごめんなさいね〜サポートなんかしていただいちゃって〜。恐縮だわぁ〜。