「モノクロームの日々」: 短編小説
梅雨の雨が窓を叩く音が、私の空虚な心に響く。ポツポツ、ザーザー。不規則で、重い。
佐藤美咲、22歳。大学から都内に出て来たものの、卒業から3ヶ月。就職活動もほとんどしていない。今はカフェのバイトすら休みがち。部屋の隅に埃をかぶった段ボール箱。ベッドのスマホには親からのLINE。罪悪感だけが募る。
スマホが震える。親友・山田桜子からのメッセージ。「美咲、今度の同窓会来る?みんな会いたがってるよ!」
なぜか胸が締め付けられる。人と会うのが怖い。自分の現状を知られるのが怖いのか?
「ごめん、体調悪くて...」
送信ボタンを押した瞬間、罪悪感が押し寄せる。また嘘をついてしまった。嫌悪感で胃がむかつく。
梅雨明け間近、久しぶりにカフェのバイト行った。レジを打つ手が震える。笑顔を作るのも苦痛。全身が重い鎧を着ているよう。
「佐藤さん、大丈夫?顔色悪いよ」先輩の声に我に返る。
「あ、はい...ちょっと...」
言葉にできない。この虚しさ、この痛み、この重さ。
帰り道、高橋翔太とすれ違う。元親友。今は一流企業に勤めている。
「美咲!久しぶり。元気にしてる?みんな連絡取れないって心配してるぞ!」
その笑顔と優しさに、突然涙が溢れ出す。喉が熱くなり、言葉が詰まる。
「翔太くん...私...」
でも、言葉にできない。今の自分。
「ごめん、急いでて...」
そう言って、逃げるように帰宅する。心臓が早鐘を打つ。呼吸が苦しい。
夏が過ぎ、秋の気配が漂い始めた頃。
部屋に引きこもる日々。
「何か変えなくちゃ!」
勇気を出して外に出る。コーヒーを買って公園のベンチに座る。周りの人々、子どもたちの声も虚しく聴こえた。
ふと、桜子と翔太が歩いているのが見える。楽しそうに話している。なぜか胸が締め付けられる。
気づけば、涙が止まらない。
その夜、スマホを見る。未読メッセージの山。LINEの「既読」すらつけられない。
布団に潜り込む。暗闇の中で、自分の心臓の鼓動だけが聞こえる。ドクドク。生きている証拠。でも、何のために?
秋も深まったある日。
また一日中布団の中。
「分かってる!分かってる...」
ふと、枕元に置いたiPhoneを手に取った。
なんとなく、オススメの宇多田ヒカルの「BAD モード」の再生ボタンを押してみた。
すぐ止めようとした手が、途中で止まる。
....................................。
なぜか涙が溢れ出す。
声を上げて泣く。痛いほど胸が締め付けられる。
曲が終わる頃、少し心が落ち着く。
このモードもいつかは抜けられるのかな?
久しぶりに「もう少し生きてみよう」と感じた。