広瀬満和
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「思慮深くして本質を見極める」使徒言行録19:35~40 日本キリスト教団川之江教会 部落解放祈りの日主日礼拝メッセージ 2023/7/9
最初期のキリスト教がユダヤ教を離れて世界中に広まったのは、皮肉にもユダヤ教がキリスト者たちを迫害したことがきっかけでした。当初ペンテコステの日に聖霊を受けた使徒たちがやろうとしたことは、直接主イエスの処刑に関わったエルサレムの人たちに、その自覚を促すことと、主イエスこそが待ち望んでいたメシア=キリストであることを受け入れるよう勧めることでした。あの過越祭の前夜に異様な空気に呑まれるように「主イエスを十字架につけろ」と叫んだ人たちは使徒たちの促しに応じて自分たちの過ちを悔い、
「密雲の中に射し込む光」エゼキエル書34:11~16/使徒言行録8:1b~8 日本キリスト教団川之江教会 聖霊降臨節第5主日礼拝メッセージ 2023/6/25
6月26日は、第二次世界大戦下の日本でホーリネス弾圧起こった日です。81年前の出来事ですが、けっして今の私たちに無関係な話ではありません。マルティン・ニーメラーというドイツの牧師が残した有名な言葉があります。ナチス政権による市民迫害が起きた時、ドイツの教会はナチ派と反ナチ派に分断されていくのですが、ニーメラー牧師はナチス政権を批判する告白教会の指導者でした。そんなニーメラー牧師が戦後になってから何千人もの前で、自分を振り返ってスピーチしたときの一節だと言われています。「ナチ
「万物が新しくなるその時」申命記18:9~17/使徒言行録3:21~4:4 日本キリスト教団川之江教会 聖霊降臨節第4主日礼拝メッセージ 2023/6/18
ペンテコステの日を境にしてエルサレムの町は、世界が一変したかのような明るさがありました。それまで行方知れずだった主イエスの弟子たちが、突然人前に姿を現して、皆が死刑に追いやった主イエスを神様が死者の中から復活させられたと告げたからでした。 振り返ってみると一か月ほど前のエルサレムは、異様な空気に包まれていました。主イエスがなぜ十字架刑に処せられたのか、冷静に考えてみるとよくわからないのです。主イエスや弟子たちが悪事を働いたわけではありませんし、社会を混乱させていたわけでも
「邪悪なこの時代から救われよ」サムエル記下7:8~16/使徒言行録2:36~43 日本キリスト教団川之江教会 聖霊降臨節第3主日礼拝メッセージ 2023/6/11
ペンテコステの日エルサレムには、世界中からそれぞれに異なる言葉を話す大勢のユダヤの人たちが集まっていました。聖霊に満たされたペトロたち十二人の使徒たちは、皆がそれぞれにわかる言葉で、離れている人たちにも聞こえるように声を張り上げて話しました。ではペトロたちは、何を話したのでしょうか。それは<あなたがたが十字架につけて殺したイエスを、神は主とし、またメシアとなさった>ということでした。 首謀者は、祭司長たちや律法学者たちでした。宗教儀礼を行い、聖書を教え、人々の信仰を導く指
「みんながカリスマ」出エジプト記19:16~20/使徒言行録2:12~21 日本キリスト教団川之江教会 三位一体主日礼拝メッセージ 2023/6/4
「カリスマ」という言葉、最近はあまり聞かれなくなりましたけれど、いっとき90年代の頃でしたか、流行語大賞の候補になるくらい流行っていました。美容師とかファッションショップの店員さんとか、その人の人気でお客さんがたくさん付くような人がカリスマ美容師とかカリスマ店員とか呼ばれて持てはやされていました。ただ「カリスマ」という言葉自体は新しいものではなくて、特別な手腕とか語り口とかで人を惹きつける魅力のある人を「カリスマ」と呼んだり「カリスマ性がある」と言ったりします。ただカリスマ
「守る集会から働く教会へ」使徒言行録2:1~6 日本キリスト教団川之江教会 ペンテコステ礼拝メッセージ 2023/5/28
ペンテコステ、おめでとうございます。ペンテコステはクリスマス、イースターと並んでキリスト教の三大祭の一つに数えられているのですが、教会の中でも今一つお祭り感がありません。「ペンテコステおめでとう」という挨拶も、いまだに言い慣れない感じが拭えません。もちろんお祭り騒ぎをすればいいというものではないのですけれども、心からお祝いできる工夫をもう少ししてもいいのではないかなと毎年思いながら今日を迎えています。 ペンテコステは主イエス・キリストが弟子たちの前に復活されてから50日目
「確信しているから、祈る」テサロニケの信徒への手紙二3:1~5 日本キリスト教団川之江教会 復活節第6主日礼拝メッセージ 2023/5/14
バーベナという花をご存知でしょうか。日本では馬鞭草とかクマツヅラとか、花の形が桜に似ているので美女桜とも呼ばれたりします。ちょうど今くらいの時期から咲き始めて、秋の終わり頃までほぼ一年、白や赤・ピンク・紫色などの花が咲くようです。また葉っぱには鎮静作用や炎症を抑える効能があって生薬として昔から重宝されたり、虫除けとかハーブとして飲み物や料理とかにも使われたりしています。なのでヘブライ語で「良い植物」という意味の「バーベナ」という名前が付けられたようです。伝説ですがキリストが
「さあ、立て。ここから出かけよう」申命記7:6~8/ヨハネによる福音書14:27~31 日本キリスト教団川之江教会 復活節第5主日礼拝メッセージ 2023/5/7
先週5月3日、私たちは憲法記念日を迎えました。日本国憲法76歳の誕生日ということになります。実は日本国憲法誕生に関わる日付には公布日と施行日があります。公布日というのは広く一般に知らせた日ということですが、これから日本の憲法は新しくなります、新しい日本国憲法はこういう憲法です、ということを明らかにした日で、終戦の翌年1946年11月3日のことでした。それから半年の周知期間を経て1947年5月3日に施行、日本という国が実際に日本国憲法のもとで歩み出した日です。この二つの日付、
「知識は人を昂らせ、愛は人を造り上げる」コリントの信徒への手紙一8:1~13 日本キリスト教団川之江教会 復活節第4主日礼拝メッセージ 2023/4/30
この地域に赴任して早11年目に入りましたが、来て驚いたことの一つに町の自治会と祭りが密接に結びついていることでした。町ごとに太鼓台が出て競い合うのは良いとして交通規制をしないまま公道を縦横無尽に練り巡ったり、自治会費の中に神社や地蔵の費用が最初から組み込んであったり、祭りの期間は公立の学校が休みになったり、信教の自由とか政教分離とかいったいどこの国の話かと思うほどの密着ぶりで、住民は好むと好まざるとにかかわらず太鼓祭りと無縁でいることがなかなか難しいように思います。それはこ
「私たちは皆、変えられる」コリントの信徒への手紙一15:50~58 日本キリスト教団川之江教会 復活節第三主日礼拝メッセージ 2023/4/23
パウロがコリントの信徒に宛てた手紙では、私たちに与えられた復活の希望が伝えられています。復活の希望というのは、神様が終わりの日に私たちに新しい命と体を与えてくださる、私たちは死んだらそれで終わるのではなく終わりの日に<神の国>で新しく生かされる、ということです。この「終わりの日」ということについて、私たちはどんなイメージを持っているでしょうか。どんなイメージと言っても漠然とし過ぎて、答えにくいかもしれません。例えばもう少し絞って言うとしたら、「終わりの日」はいつ頃のことだと
「今、共にいる」コリントの信徒への手紙一15:12~19 日本キリスト教団川之江教会 イースター礼拝メッセージ 2023/4/9
イースターおめでとうございます。イースターはイエス・キリストが復活されたことをお祝いする記念日です。十字架刑に処せられ死なれたイエス・キリストが3日目に復活された、聖書はそう証言しているからです。3日目と言っても、丸々3日後というわけではありません。主イエスが十字架の上で息を引き取られたのは安息日が始まる前の午後3時過ぎ、金曜日の夕方でした。アリマタヤのヨセフが日の暮れる前に主イエスの遺体を埋葬し終えた頃、安息日が始まります。土曜日です。そして翌日、日曜日の朝早くには主イエ
「最後の晩餐をご一緒に」出エジプト記12:21~30/ルカによる福音書22:14~23 日本キリスト教団川之江教会 棕櫚の主日礼拝メッセージ 2023/4/2
キリスト教の暦では、今日から土曜日までの一週間を「受難週」と言います。イエス・キリストが十字架に架けられて死なれたことを憶える一週間です。キリスト教のシンボルが十字架であることが示しているように、この受難週とその翌日のイースターはキリスト教にとって一番重要な時です。キリスト教の記念日と言えばクリスマスが一番に挙がるのかもしれませんが、敢えて言えばクリスマスよりも大切な記念日と言えます。 受難週の初日、つまり今日ですけれども「棕櫚の主日」と呼ばれます。主イエスと使徒たちが旅
「誰も自分で得るのではなく」ヘブライ人への手紙5:1~10 日本キリスト教団川之江教会 受難節第五主日礼拝メッセージ 2023/3/26
イエス・キリストは、しばしば「王」に譬えられてきました。王は人々の上に立って国を治め、人々の間のトラブルを裁き、敵から自分たちを守ってくれる存在だからです。ただ実際には、そんな願ったり叶ったりの王ばかりではありません。権力を笠に着たり自分の利益だけを追い求めたりするばかりで、かえって人々を苦しめ平和な社会を壊してしまう王も少なくありませんでした。それでも主イエスの時代、ユダヤの人々は王としてのキリストを求めていました。それには二つの理由が挙げられます。その一つは、当時のユダ
「信仰のない、よこしまな時代に」民数記14:26~30/ルカによる福音書9:37~45 日本キリスト教団川之江教会 受難節第四主日礼拝メッセージ 2023/3/19
ある日主イエスは、祈るために山に登って行かれました。主イエスは時折、人里から離れて一人で祈られることがあるのです。でもこのときはペトロ、ヨハネ、ヤコブの三人の弟子を連れておられました。かといって、四人で一緒に祈るというのではなかったようです。途中で弟子たちを待たせて、主イエスは少しばかり先に進んでやはり一人で祈っておられたのです。その間弟子たちは何もすることがありませんでしたから、次第に眠気が迫ってきます。うとうとしながらも何とか眠気をこらえていますと先の方で祈っておられた
「真理の霊と惑わしの霊を見分ける」創世記6:5~8/ヨハネの手紙一4:1~9 日本キリスト教団川之江教会 受難節第二主日礼拝メッセージ 2023/3/5
たとえば誰かから言葉をかけられて、その人がその言葉通りの意味でそう言っているのか、あるいは裏に別の意図があるのにそれを隠して惑わそうとしているのか、それを見分けることは案外難しいものです。その人の思いが真理(まこと)の思いか惑わしの思いか、それがすぐにわかるのであれば、この世から詐欺というものがなくなってしまうことでしょう。でも残念ながら詐欺はなくならないばかりか、より巧妙になって私たちを脅かしています。詐欺というのは、なにも金銭的に関わることだけではありません。昨今また問