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楽園 2

ママが言ってた日本人…ってこの人?
どこかで見た事あるような…どこだっけ?
思い出せない。

ママが知り合いから頼まれて、面倒を見ることになった日本人の男の子。
暫くこの島に滞在すると聞かされてたから、どんな子かとドキドキしてたけど…

想像してた人と全然違う。

ラフに整えられた短い髪、薄いシャツから綺麗に鎖骨がのぞいている。腕には程よい筋肉がつき、大きな手と長い指が大人っぽい。口元にたくわえられた髭がセクシーだ。
私と同じミックスだろうか…?
眼鏡をかけた彫りの深い横顔を見つめた。

もっと子どもっぽくて、ノリの良い男友達みたいなタイプだと勝手に思っていた私はちょっと恥ずかしくなった。

彼はとても疲れているのか、私の事など眼中にない顔で会釈だけするとベッドルームへと消えた。

気怠る気に、チラッと私に一度だけ視線を送った。「誰?」名前も知らない私に心の中から問いかけてるみたいだ。

その、深くて茶色がかった瞳を見つめ返すのが精一杯だった。

同じ大学の男の子達に、どれだけ言い寄られても心は動かない。甘い言葉、センスの良いプレゼント、私に対する称賛にも飽き飽きしていた。

そんな私に彼は熱い視線どころか笑顔も見せなかった。そんな事ってある?私は自尊心を傷つけられたような、はがゆいような、何とも複雑な心境になる。

「ねえ、ママ!!!
私、あの人と仲良くなれそうにないわ。だって、初対面なのに笑顔ひとつ見せないなんて…ちょっと失礼じゃない!?」

ママは、私を見て笑う。

「ふーん。。そうなんだ〜。笑いかけてほしかったの??いいじゃない、ミステリアスでクールな日本人…ステキな人だけどな〜。
少しずつ仲良くなればいいわよ。ひと夏しかいないんだから」

ママはいつもそうだ。スペシャルポジティブ。
だからこの陽気な島出身のパパと気が合ったんだわ。パパはもうこの世にはいないけれど、いつもママの心の中にいる。

私は、コンドミニアムから歩いてすぐの自宅に帰るまで、ずっとずっと考えていた。
自分の部屋のベッドに倒れ込むと、クッションを抱きしめて天井を見上げる。

「うん。やっぱり無理。だってノリ悪そうだし…私の周りにはいないタイプ。仲良くなるなんてできない…でも…」

でも、何だろう。
彼の胸元から細いチェーンがのぞき、揺れるシーンが鮮明に思い出される。
透ける白いシャツの広くて大きな背中越しに振り返り目が合った瞬間、時が止まった気がした。

今まで出会った事のないタイプ。
何を考えてるのか、分からない。
繊細で、ミステリアスな人。

私は初めて出会った男に心をかき乱されている。
それは、紛れもない事実だった。
いつのまにか、眠りにつく。
明日、また会えるかな…小さな期待で胸が熱くなるのを感じた。


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