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キアヌの松葉杖――マサヤ語るびっくりしてるヒマなんかないよ。 銃声が聞えたら、反射的に伏せないと。 デトロイト駐在の商社マンなんて、聞こえはいいかもしれないけど、不安ばかりでね、ふるえながら生きてた。 ところがある朝―― テレビのキアヌ・リーブスに見とれちゃって…… コーヒーポットをとり落としたの。 運わるく足の甲を直撃、大やけど。 松葉杖で通勤するはめになっちゃった。 そしたらね、その日から、世界がぱっと一変したの。 バス停までよろよろ歩いてると、車がとまって、
前の日の雨で桜の花はほとんど落ち、路面や水たまりに散らばっている。泥にまみれた花びらを踏んで歩く。靴の裏にも花びらはついているだろう。僕はいつからか桜の花が灰色を帯びて見えるようになった。 僕は「クラバート」と言うドイツの児童文学書をビジネスバッグに入れている。僕にとってスヌーピーのライナスの毛布のようなものかもしれない。 名門と言われる大学のテニスコート。そこで行われる国際大会。国際大会と言っても大坂なおみや錦織圭が出る訳ではない。ツアー最下部のフューチャーズ。世界を