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#小説 記事まとめ

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2017年12月の記事一覧

申し訳ないのはこっちです

1. どんなに超絶急いでいても、駅の改札は開かない時は開かない。特にsuicaにお金が入っていない時はなおさらだ。でも人は焦れば焦るほど、当たり前の事実から目を背けがちになる。何かの間違いでは?となんどもセンサーにカードを叩きつけ、貴重な数秒が流れていった。 この日はイラスト持ち込みの営業の日で、時間が迫っていた。その会社はなんども電話してようやくアポの取れたセンスのいい憧れの会社だった。前日から絶対遅刻しないぞと意気込んでいたが、そんな時に限ってなぜか寝坊する。自動

第2回開催しますの御連絡いただいたっす記念:第1回NovelJam生還記、あるいは如何にして私は心配するのをやめ(なくもなかったが、それはともかく、何だかんだ不安を抱い)て世界初の即興小説制作イベントを愉しむようになったか【注00】

【00】ちなみに以下の文章は、半分ほどは実際に生還直後にしたためたものですが、今回めでたく第2回があるとの御連絡をいただき、「あ、そういえばアレまだ書きかけだった^^;!」と慌てて完成させた文章であります……が、特に文章内容もノリも変更なく、その後の顛末については文末に第三部として加筆してあります。あと、投げ銭システムですので最後まで読めますが、気に入ったらチャリ〜ンと212円ほど放り込んでやってください^^。 第一部:接触篇S「とゆわけで無事に生還したわけですが」 M「な

¥212

「シリコンの季節」(小説)

 全裸の女だ。  投棄場所としてもう何度目かの利用となる山道の路肩谷側に、白い肌が見える。  数多の不法投棄ゴミや土にまぎれた全裸の女の肌は月明かりの下、不自然なほどその白さを夜の闇の中で浮き彫りにし、気泡緩衝材でぐるぐる巻きにされた仰向けの胴体部分からはみ出た顔の中央にある両目は開かれたまま、上から覗きこんでくる闖入者と目線を合わせている。  二郎は身動きがとれなかった。  生きていないはずなのに、生きているかのような目線を向けてくる。  これまでの奴らとは、明らかに異なっ

¥400

魔法がとけた夜のこと

   22歳になるまで、わたしは自分のことを特別な子だって思いこんでいた。  でも、絵が上手かったり、足が速かったり、これと言って才能があったわけじゃなくて、結局のところ自分が平凡な人間だと気づいたのは、思う存分若くてきれいな時間を使った後だった。  だれのせいでそう思い込んだかと聞かれたら、間違いなく、8年前に死んじゃったママのせいだった。  子供の頃はそれでも絵を描くことが好きで、アニメのキャラクターや、雑誌のモデル、とにかく好きなものはなんでも画用紙に色鉛筆で描き殴