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#8 ぼくイエ2を読んだ感想
今話題の「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」。これはイギリスの駐在員や留学生の中でも話題になっている本です。
昨年読んだ1が面白かったので、2を買って読んでみました(kindle版)。今日は2に焦点を当てて、良かった点を3つ挙げようと思います!
・どういう話か?
話の概要はAmazonなどに詳しく書いてありますが、自分なりに一行でまとめようとすると、「英国ブライトンに住む筆者と中学生の息子が、学校や日々の生活を通して、多様な社会を生き、成長していく話」(ノンフィクション)という感じ。
でも、「ぼくは」というタイトルで始まるのにも関わらず、正確には息子が日々新しいことを学んでどんどん成長していく、というストーリーではないと私は思いました。
どちらかというと、「ぼく」の発言や気づきを通して、筆者が思いをめぐらす場面が多いです。そして、その描写を通して日本人である我々も考えさせられる・学ばされるという構図になっています。
むしろ、物語の中の「ぼく」はすごく悟っています。中学生でこんな大人びた発言ができるの?!と毎回驚きます。筆者の意図は、おそらく「ぼく」の発言や「ぼく」を取り巻く出来事を通して、日本人に多様性について考えてほしいのだと思います。
・テーマは多様性
私もちょっと前のnoteで、イギリスの多様性については書かせていただきました。人種、国籍、宗教、ジェンダー、菜食・肉食、貧富の差、、こんなにも多様な世界を身近に感じられる経験は、日本ではできないかもしれません。
ぼくイエは、そんな多様性にあふれる、繊細なバランスをとりながら変化し続ける社会の様子が一冊にぎゅっと詰まっていて、気づきや学びが多いから、日本人から多くの支持を集めているんだと思います。
物語の中では、日本のホームレスの扱いについてでてきましたが、日本人に対する問題提起みたいなものも含まれています。
やはり筆者が述べているように、こういうセンシティブなテーマは答えがなかなか難しいですね。。だから、(幸いなことに私達が住む国は民主主義ですし)、英国でも、日本でも、皆で議論をしてより良い社会にしていきましょうってことかと思います。
・良かったところ3選
①文体のやわらかさ、心地よさ、とっつきやすさ
普段本はあまり読まない自分が一気に読み終わりました!笑 とても柔らかく、分かりやすく、心地いい文体です。
また、筆者と配偶者の方が「母ちゃん」・「父ちゃん」と呼ばれていたり、下町っぽい言葉が使われていたり。日本人にとってロイヤルのイメージが強い「おしゃれな、遠く離れた国、イギリス」というイメージとは違い、とてもとっつきやすい、身近な国の話に感じられると思います。
それでいて、登場人物のほとんどが日本人ではなく、海外の情景が目に浮かぶあたり、どこか異国の情緒あふれる感じもあります。昔、赤毛のアンやアラバマ物語の日本語訳を読んだ時のような、そんな感覚を思い出しました(伝わりますかね…)。
こんな絶妙なバランスを保っているのが、また、読んでいて心地いい理由なのかもしれません。
②イギリスの教育システムがすごい
本書が多様性の話に重きを置いていることは前述しました。ただ、今回はそれに加えて、大きな発見がありました。それはイギリスの教育システムについて。
詳しい制度内容は割愛しますが、イギリスの中学校ってスピーチとかビジネスなどの実用的な科目(授業)があるんですね。
スピーチの授業(試験)は、是非ぜひ日本でも取り入れるべきかと。
こちらの人は、本当に喋ることが大好き・得意です。それはこういう練習を小さい頃から受けているからなのだと思いました。人前で堂々と話すスキルというのは、国際社会の中で必要不可欠です。
あと、コンサート会場の宣伝をする、という音楽の課題の話が物語で出てきますが、これも面白い。思えば、日本でも「この本の帯をデザインしてください」という授業がある学校もあると思いますが、こういうデザイン・企画能力も将来ビジネスなどで役に立ちますよね。
また、物語の中で、学年委員の面接で「リーダーに必要な資質は何だと思うか」と聞かれることが書かれていたけど、これも欧米らしい。私も留学時に「リーダーとマネージャーの違いは何か」みたいな授業を受けたことを思い出しました。日本ってリーダーシップの授業って、、あったかな。
こういう将来使える実用的な授業を日本もどんどんやっていくべきだし、スピーチの試験なんてまさに欧米!って感じですが、日本も取り入れるべきです。これらをできるだけ若い頃から経験するのが大事。
日本も国際社会で他の国をまさにリードしていくために、暗記中心の教育から、実践型・発信型の教育に転換していくべきなのではと、(教育者でもなんでもないですが)、思いました。
③イギリス社会における筆者の実体験がベース
たくさんの重要なメッセージが織り込まれている本書ですが、それがこんなにもまっすぐ読者に伝わるのは、筆者が長年イギリス社会に住んでその一員になり、他の登場人物との関係性を築いて、身をもって体験したことがベースになっているからでしょう。そうでなければ、本書はここまで詳細にかけないし、説得力がなくなってしまうように思います。
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ぼくイエ1と2は、日本でめちゃくちゃ売れたと思うけど、これによって筆者の生活に影響はあったのでしょうか。父ちゃんはもうダンプとか乗らなくてよくなったんじゃない?とか、勝手に妄想しています笑
ぼくイエは、「ぼく」が成長してしまったということを理由に2で完結だそうです。確かに区切りとしてはいいのかも。
でも、またいつか成長し、パワーアップした「ぼく」に会いたいですね。
まだ読んでいない方、必読の本です!!