支配欲は人を簡単に壊す
自分の根底かどうかはわからないが、私には少なからず支配欲があると思う。
だれかれ構わず誘惑できるほどの魅力はないものの、自分のアンテナで「コイツや」と察した相手を惹きつけ、壊せる自信は無性にある。
あるがゆえに、発動させないようにも気をつけてきた。
支配欲および完全支配の可能性に気づいた最初の相手は同性だった。
彼女は私に心酔し、私に異性の恋人がいることをもどかしく感じつつも、同性では自分が一番であると信じることで均衡を保っていた。
「あなたというジャンルにおいて、私はあなたのことを一番愛している」。
そんなペテン師のような戯れ言を学生時代の私は吐き続けていた。
結局のところ彼女は、どうしたって私が自分一人のものになはらないことを受け容れ、一風変わった友人関係となり、別の女性とパートナーシップを築いた。
次の相手はフリーの異性だった。
当時の自分には、また別の恋人、今も続く同棲相手がいたものの、向こうも承知のうえで恋愛が始まった。
にも関わらず、彼は少々狂ってしまった。
自分に心酔させようという、支配欲が招いたことだったと思う。
その後、彼は立ち直り、別の女性と結婚した。
結婚してからも、恋愛の対象は私だと言い、今も関係が続いている。
この経験から、「独り身の人間とは付き合わない」という決め事をつくった。
支配欲を満たしたいのなら、相手に墓場まで付き合う覚悟が必要だと思う。
つまり満たしていい欲望ではない。
しかし再び狂わせてしまったのは、舐め犬を志願した既婚者の男性だった。
お互いの状況を知ったうえで関係をスタートさせた。
当時、私には同棲相手と恋人がいた。
にもかかわらず、彼は狂った。
同性相手の存在は受け容れられるものの、恋人への嫉妬が抑えきれなかったらしい。
結局、精神を病みかけてしまい、生活を守るために向こうから別れを切りだしてきた。
彼を狂わせてはいけないと思いつつ、彼を自分一色に染めてしまいたいとうドス黒い欲望もあったことは否めない。
その責任を負う気もないくせに、私が居なければ生きられないよう洗脳したいという欲求が自分にはあるのだろう。
私自身が、それほどまでに魅力的なわけでは決してない。
ペテン師の能力に長けているだけだと思う。
相手を心酔させるだけの甘言が難なく出てしまう。
嘘をついている気もなければ、罪悪感もない。
これも幼児性愛と同じぐらい、禁忌な願望なのかもしれない。
性的嗜好なのかどうかは定かではないが、誰かを完全に支配し、狂わせたいという思いが、十代の頃からずっと続いている。
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