代理人弁護士名義による調停手続外の示談
設例
金銭支払請求してきた相手方と調停中だが、調停外の示談書締結の方法で解決する見込みである。相手方は依頼者の数が多く連絡調整にも手間を要するため「甲、乙、丙・・・代理人弁護士〇〇〇〇」との名義で示談書を締結したいとの意向をもっている。この方法の肯否は?
結論
純粋に法的視点でいえばリスクがない訳ではないが、差し支えない。
理由等
リスク
示談書の締結権限ないし代理権を有することの確認ができないため、無権代理のリスクがある。
和解など訴訟を終了させる訴訟行為については特別授権事項(民事訴訟法55条2項)であり、パラレルに考えるなら、やはり授権は必要(調停手続を委任されているからといって、示談内容まで当然に委任されているわけではない。)。
許容される背景
もっとも、実務上はしばしば行われている方法であり、その背景には以下のような理由がある。
①仮に無権代理であれば弁護士が懲戒請求をされ得る事案であり、そのようなリスクを冒してまで授権されていない示談をすることは、通常想定し難い。つまり、類型的に見て信用性の高い属性の代理人なので、リスク発生頻度(極めて低い)の点で通常の代理人とは異なる。
②仮に無権代理であったとすれば、無権代理人の責任追及で相手方代理人にかかっていくも可能である。