デジタルツールを使った業務改善をもう少し具体的に考えてみた
■この記事を書いている人
事業会社(小売業)の法務担当です。
昔は事業部門の担当者として法務にいろいろと相談をする立場でしたが、今は逆に相談を受ける立場になっています。
自分自身や所属部門の仕事の進め方を改革することによって、働きやすい職場の実現や会社の収益向上に貢献したいと思っています。
その改革の手段として、デジタルという切り口で取り組もうとしています。
前回の記事では、抽象的に「こんなことできたらいいな」「こんなのあったらいいな」を仕事以外の趣味も含めてフワフワと考えました。
今回は、趣味の話はいったんおいて、私の職場(ウチの法務)で実現したい業務改善のアイデアについて、その実現可能性や方法論などをもう少し具体的に検討してみることにします。
↓前回の記事です。
検討の対象となるアイデア
今回は、検討対象として以下の3点のアイデアについて検討します。
アイデア① チャットボット
アイデア② タスク共有ツール
アイデア③ 先例集
以下、各論です。
アイデア① チャットボット
どんなことをしたいか(目的)
目的は、軽易な案件の処理の省力化・効率化です。
ウチの法務には、社内の各所から様々な相談や依頼が寄せられます。
コミュニケーションのチャネルはメールと電話で、時にはアポなし突撃訪問を受けることもあります(「〇〇さん、ちょっと今いいですか?」というような、アレです。)。
こうした相談や依頼の多くは、経営に対する影響は極めて軽微で、かつ同じような内容の繰り返しだったりします。
そういった内容に一つ一つ人力で対応をしているために、結構な手間と時間を取られて、業務の効率を落としているように感じます。
また、相談をする側からしても、ウチの法務に対してどういった連絡や接触をすればよいのか分からない・・という声を聞くこともあります。
そこで、類似事例が豊富で、かつ軽易な内容の相談・依頼については、チャットボットによる自動応答で省力化・効率化できれば、ウチの法務にとっても負担が減りますし、ユーザーにとっての分かりやすさやスピードアップも期待できるのではないかと思います。
使用するツール
LINE-Bot
Make
具体的な仕組みとして、例えばウチの法務で最も多い業務として「契約審査」(各部署で締結する契約についてリーガルチェックをかける業務)があります。
契約審査の対象となる契約の多くは類型化することができますので、次のようなフローを想定しています。
①契約の類型尋ねる
↓
②類型ごとに注意点を記載したチェックシートを用意しておき、そのチェックシートに誘導する
↓
③事業部でチェックシートを活用しながらセルフチェックしてもらう。
法務の人力による契約審査はしない。
メンバーからのフィードバック
このアイデアについて上司Kさんと話してみたところ、ボットの効能そのものに疑問を感じているようでした。
そもそもそのボットを使ってくれるのか?
使ってもらうとして実効的に機能するのか(役に立たないんじゃないの)?
ボットの効能については、実は私も少し疑問を感じているところでした。
というのも、世の中の多くのボットは実に不親切というか、役に立たないというか・・・。
もっぱら提供側の手間やコストを下げるためだけに存在しているような、ユーザー目線を欠いたボットも少なからずあるように思えます。
(デジタル難民の独り言です。)
小括
簡単なボットであれば比較的容易に実現できそうですが、逆にその程度のボットだと、世の中にあふれているダメボットになりそうな気がします。
本格的なボット(≒実効的に機能するボット)になると、外部ベンダに開発してもらうことも多いようで、そのレベルのものは自分には難しいです。
一定の水準をクリアするものを作るという意味では、実現可能性はあまり高くなさそうです。
また、そもそも論ですが、上記の契約審査の例でいうと、契約審査とは当該事業部限りでの契約締結を許容せずに、法的な視点でのチェックを行うことに意味があります。そうすると、上記のようなフローで行うのは、デジタルテクノロジーによる解決というよりは、内部規定の改廃・運用の問題ではないか・・という気がします。
アイデア② タスク共有ツール
どんなことをしたいか(目的)
メンバーが現在進行中の仕事について共有することによって、現在進めている仕事について他のメンバーから知見、助言を得る入口にすることを目的としています。
上司が部下の仕事を管理するための表を作るのではなく、メンバー間で知識、情報、経験を共有する入口を作るためのツールです。
使用するツール
Glide
Google Spread Sheet
クラウドや共有フォルダに保存された案件の一覧表を、アプリ(Glideで作成
)から参照すること方法を考えています。
メンバーからのフィードバック
上司Kさんからは、excelで管理する方法との違い(このアイデアのメリット)がよくわからないとの指摘がありました。
また、上司Kさんとしては、既製品のタスク管理サービスの導入を考えているようで、心はそちらにあるようでした。
小括
今私が考えているレベルの成果物だと、デジタル難民が手習いで作ったという程度のものになりそうです。
便益を感じて積極的に使いたい、という状態にはなりそうにないので、その意味では実現可能性はあまり高くなさそうです。
一応作ることはできるが、使ってもらえる・機能する、という点で乗り越えるべきハードルがあって、そのハードルをいまだ具体的に検討できていないというところです。
アイデア③ 先例集
どんなことをしたいか(目的)
メンバーと組織が相互作用的に問題解決能力・対応力を高めることを目的としています。
法務業務は、人単位でみても組織単位でみても、個別具体的な案件を通じて得た知識や経験とそれらの蓄積が問題解決能力の向上に直結します。
個人が具体的な案件を通じて得た知識や経験を組織としてのナレッジとして蓄積したり、組織が保有する過去の案件の情報を個人が参照できる状態を実現したいと思っています。
いわゆるナレッジ・マネジメントの法務版です。
使用するツール
WORD
EXCEL
Power Automate Desktop(PAD)
完了した案件で得られた知識、経験その他の知見をWORDに記録し、それをクラウドに格納し、特定のキーワードを指定すれば自動的に抽出・複製できるようなツールを考えています。
メンバーからのフィードバック
Kさんとしても、先例集の意義については一定程度認めてくれているようでした。
チャットボットやタスク共有ツールよりは実益を感じているようです。
一方で、
共有フォルダにWORDを格納する方法との違い
誰が個々の先例集を作成・編集するのか
メンバーに編集する権限をつけるのか
といった質問も出ました。
小括
いくつかの課題はありますし、先例がある程度蓄積されるまでは、あまり便益を感じないかもしれませんが、中長期的に見た場合には、どんどんレバレッジが利いてきそうなツールです。
WORDやEXCELなど比較的なじみのあるツールを軸にして作成できそうなので、技術面での実現可能性も相応にありそうです。
まとめ
検討結果を踏まえて、表にしてみると次の通りです。
実効性と思い入れが決め手となって、先例集を最上位の評価としました。
今後は先例集を軸に、デジタル切り口での業務改善ツールを検討してきたいと思います。