「何を言いたいのか分からない人」
の頭の中は?
※今回は、心理学博士・MP人間科学研究所代表: 榎本博明さんの教えです。
皆さまの周囲に、要領を得ない話し方をする為、職場の人たちを苛立たせる人はいませんか?本人は必死にまくしたてているけれども、感情的な上に、話が回りくどくて結局何を言いたいのか分からないし、トラブルも起こしがち。職場にこういう人がいる場合、どの様に接したら事態が好転するのでしょうか?
ただ興奮しているだけ
要領を得ない話し方をする為、職場の人たちを苛立たせる人がいます。話が回りくどくて、結局何を言いたいのか分かりません。そんな部下に振り回される事が多く、困っているという管理職がおられます。
<具体的な事例>
「まあ、とにかく何を言いたいのか分からないんですよ。そんなだからトラブルも多くて、本人も困ってるんでしょうけど、しょっちゅう興奮した調子で何か言いにくるんです。こっちも仕事を中断して耳を傾けるんですけど、結局何を言いたいのかよく分からない」
『興奮した調子という事は、何か困っている事があって相談に来るんでしょうか?』
「そうなのかもしれませんけど……まあ、いろいろ捲し立てるんですよ。でも、枝葉末節の話ばかりで、いつ本題に入るのかと思って聞いて内に突然話し終わり、『こんなんじゃ、やってられませんよ。何とかしてください』とか言うんです。これ迄の話は前置きの雑談じゃなかったのか?って気づくわけですけど、そもそも何が問題なのかが分からない」
『そうですか。何か困っている事があって、何とかして欲しいと言って来るのですけど、話が要領を得ない為、どうして欲しいのか分からない、そもそもどんな事で困っているのかが分からないっていう事ですか?』
「ええ、そうなんです」
『それで本人に再度説明を促したりはしているんですか?』
「もちろんです。話がよく分からないから、何が問題なのか、もう少しわかる様に説明して欲しいと言うと、
『だから、さっきから言ってるじゃないですか、ほんとに困ってるんです!』といきり立ち、捲し立てるんですけど、やっぱりよく分からない」
『感情が先走るばかりで、理屈が飛んじゃってる、って感じですかね』
頭のなかのモヤモヤを、質問する事で整理してあげる
「まさにそんな感じです。何か困ってる事がある事はわかるし、何とかして欲しいっていう気持ちは伝わってきます。でも、何をどうして欲しいのかが分からない。それでこっちが困惑していると、その表情を見て諦めるのか、
『あっ、いいです。現場の事はどうせわかってもらえないって思ってたので』なんて捨てゼリフを口にして立ち去って行くんです。現場の事は分からないっていう事じゃなくて、あんたの言い方がまずいんだろう、って言いたくなっちゃいますよ」
『きっと頭の中が整理出来ていないんですね。こんなんじゃ困る、やってられない、といった感情面ばかりが意識の前面に出ていて、何がどう問題なのかっていう理屈面が意識に上っていないんでしょう。本人もちゃんと意識化していない。だからいくら気持ちを訴えられても、何が問題なのか分からない、っていう事になってしまうんでしょうね』
そこで話が要領を得ず、イライラする気持ちはわかりますが、そこはグッとこらえて、混沌とした話の糸のもつれをほぐす様な対話を心がける様にアドバイスしました。その際、話の中に出てきた言葉を手がかりに質問しながら、話の流れを明確化して行く必要があります。
例えば、人の名前や業務についての話が出たら、「○○さんがどうかしたんですか?」「○○さんの言動に何か問題があるっていう事ですか?」「△△業務で何かまずい事があるっていう事ですか?」という様に、問題のありかについて質問して行く事です。
そして、○○さんに何か問題を感じているという事なら、「○○さんのどういう所が問題だと思うんですか?」「○○さんにどうしてもらったらいいと思いますか?」などと焦点を絞って行く。△△業務に何か問題を感じているという事であれば、「△△業務のどんな点が問題だと思うんですか?」「△△業務をどの様に改善したらいいと思いますか?」などと焦点を絞って行く。
要は、本人が頭の中を整理するのを手助けする必要があります。それによって、何が問題なのか、どうして欲しいのか、といった事がはっきりしてくる。本人は、モヤモヤしながら苛立っている訳ですが、こうした対話によって、自分が何に苛立っているのかがわかってくのです。こっちも、何が問題でどうして欲しいのかがわかって来ます。
言語化する能力に乏しい
『あれこれ突っ込んで質問してみても、やっぱりハッキリしない、という訳ですね』
「ええ。例えば、ある同僚の態度に不満を持っているという事は伝わってくるんですけど、どんな態度が問題だと思うのかと尋ねても、『なんか嫌なんです』『あれはよくないと思うんです』って言うばかりで、具体的な説明にならないんです」
『そうですか。言語化が苦手、自分が思っている事を言葉で説明するのがどうも苦手な様ですね』
「あっ、それですね。そういえば、こんな事もありました。本人がやっている作業に入力ミスが多いので、定型文のコピペをして、日付や数字や先方の名前をその都度修正すれば、毎回すべて入力するよりミスが少なくなるのではとアドバイスしたんです。それに対して、『そうすると、かえって間違えそうで……』と言う。でも、すべて新たに入力する事で入力間違いが目立つのだし、コピペをしたくない理由というか、こだわりでもあるのかと尋ねても、『もう、いいですか』と言って立ち去っちゃうんです。言語化出来ないんですね、きっと」
『何か思う事があるんでしょうけど、それをうまく言語化出来ないんでしょうね。トラブルが多いというのも、思っている事を周囲の人にうまく伝えられない事が関係している可能性がありますね』
「あんな感じだと、私もイライラするほどだから、一緒に仕事している仲間たちもイライラするはずです」
『そうですね。本人自身も、周囲にわかってもらえない為イライラするんだと思います。やはり言語化の訓練をする必要がありそうですね』
自分の思いを言語化する、具体的な方法とは?
そこで、自分の思いを言語化する訓練として、具体的な方法をアドバイスする事にしました。
ただし、個別に言語化の訓練をすると、本人は自分が問題人物視されていると感じて被害感情を抱く可能性もあるし、当人に限らず言語化能力を磨く事はコミュニケーションの円滑化に役立つので、研修の一環としてその部署のメンバー全員に行うのが良いといったアドバイスも付け加えました。
まず簡単に出来るのは、思う事を文章にする練習です。ここで問題となった様な人物の場合、作文が苦手なのではないかと思われます。作文が得意な人物にしてみれば、ただ自分が思っている事をそのまま書けばいいのだから簡単なはずです。しかし言語化するのが苦手な人物にとっては、自分が思っている事を言語化するのは難しいのです。
慣れない環境では落ち込んだり、不安になる事もあると思いますが、そうした感情はピークを越えれば下がって行くものです。
不快な感情をそのままにして、ひたすらストイックに実践・練習を繰り返す精神力・身体力が鍵になるでしょう。
頭の中が言語的に整理されていないのです。思いが言葉で整理されずに、モヤモヤした状態で漂っています。そこで、思っている事を言語化する訓練によって、頭の中を整理して行くのです。
自分が思っている事が頭の中で言語化されれば、本人も自分の思っている事を明確につかめますし、人にそれを伝える事が出来る様になります。自分の思っている事を人に伝えられれば、気持ちがスッキリします。それによって、コミュニケーションも円滑になり、ストレスも軽減され、モチベーションが高まるといった効果も見込めるのです。
頭の中のモヤモヤを、対話を通してハッッキリ掴める様にして行くというのは、いわゆるカウンセリングの基本原理でもあります。それを応用して、時々、思っている事を引き出す様な対話の場を設けるのも有効でしょう。
自分の思いを人に伝える為には、思いを言葉にしなければなりません。言語化が苦手な人物は、普段から思いを口にし合う様な人間関係をもっていない事が多いのです。その様な場を与える事で、自分の思っている事を言語化する習慣が身につき、コミュニケーションも円滑になって行く事が期待出来ます。 以上
今回の“教え”は、私も新入社員時代に経験した内容でもあります。社内・その業界の用語や相手様の会社名・個人名等を知って・理解していないと自分でも上手く報連相が出来ず、よく上長・先輩方からも「何が言いたいんじゃ!」と関西弁で、ご指摘されました。
これは私の私見ですが、まず「結論」から報告ですよね?そこから6W2H1Pで相談して、「何故?*5回」を繰り返しドリルダウンして、少ない知識でも全て上の方から指示を仰ぐのでなく、自分なりに考えた“処方箋”を提示して、お互い擦り合わせをし共有して、課題解決に実行する。この流れは、何処の会社でも通用する事だと思います。
先日も若い方から電話でヒアリングの話をしましたが、私は、相手が「一体何を伝えたいのか?」「落とし所は何か?」「どの様な結果を期待しているのか?」と感じ、相手の会社名・氏名・年齢・目的について伺った上で、話に付き合い理解・共有を致しました。何故?年齢を聞くか?というと20代の方の場合は、「何が目的で電話を掛けて来たのか?」が分からない事が多く、私が“教える”立場の役割があると社会人としての使命感があるからです。今後、この若い方達が、世の中を背負います。良い習慣・行動は、伝承して行く事が、社会全体にも良い事だと考えているからです。今回の記事に私にとって「真新しい発見・気づき」はありませんでしたが、この投稿は、どなたに読まれるかは分かりません。それぞれの年代の方々に“気づき”があるかもしれないと考え、あえて投稿致しました。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。 「W」より