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【水の記憶・閑話】トガヒミコを記憶する血


(※注意!ヒロアカ39巻、最終巻のネタバレあり)

実は私は、「僕のヒーローアカデミア」というマンガが大好きです!

いきなりここでなぜ別ジャンルでのお気持ちご表明をし始めたのかと思うでしょうが、しばしお付き合いください…

少し前に無事最終回を迎えました。
ありがとう!おつかれさまでした堀越先生!


先日最終巻が発売されたのですが、ちょうどお仕事がお休みだった私も朝イチで購入し、早速読みました!
淋しくなるけど最高だった!

この最終巻の中で、本編終了後の後日談のような位置づけの書き下ろしが掲載されています。

そこで、私のこの謎記憶と、前回の【水の記憶⑦】(下にリンク)で取り上げた臓器移植のお話に近すぎないが遠からず…  という感じのエピソードを見つけてしまいました。



私は自分のこの謎記憶というものが、それほど一般的ではない体験だということは自覚しています。


さらにそれを言語化して見える形で表現し始めたのはたったここ2、3ヶ月のことです。

そんなタイミングで、大好きなマンガの一番最後で、この自分の人生最大の謎とニアミスする展開に出会ったことがすごく嬉しかったのです。

キャラクター達への思い入れも相まって、ついたまらずやみくもに、このようにここに記してしまっている次第です。



その場面を簡単に説明すると…


まずヒロインの麗日お茶子と敵であるトガヒミコがいます。

麗日さんとトガちゃんは、連載初期から相対する敵味方同士として描かれています。

生い立ち、環境についても、麗日さんは極陽、トガちゃんは極陰でわかりやすい対立が設定されています。

でも陰陽は逆位置にいるようで実は両者それぞれがいるからこそ存在できるものです。
太極図を思い浮かべていただけると分かりやすいと思います。

同じものが違う側面を見せているだけなのです。

それは正義と悪という対立にも言えることです。


二人には本当はたくさんの共通点があり、どちらも自分が正しいと思うありようを強く強く自分自身に課しています。

お互いに惹かれあっているにも関わらず、自分がこうありたいと望むその正しい姿を強化するために、対極にあるそれぞれの存在を否定し抹消しようと頑張るのです。

でも、本質は同じなのです。

麗日さんもトガちゃんも、それぞれただ必死に自分自身に誠実であろうとする女の子なのです。


だから惹かれ合うのです。

最終戦、命をかけた戦いの中で、ヒーローであるためにずっとトガちゃんが伸ばす手を払いのけてきた麗日さんが、諦めかけたその手をすんでのところで取り戻します。


お互いが強くぶつかり合うことで、敵味方という主観によるエゴの鎧が粉々に砕け、
散り散りになり、
あなたと私は同じだったと全てを受け入れて一体となっていく2人の姿は、幼ささえ感じさせてとても愛しいのに悲しく、
私が読んできたたくさんのマンガの中でも忘れることはないだろうと思うくらい、深く印象に残る表現でした。


戦いの最後、失血で命が危うい状態の麗日さんに、トガちゃんが自らの死を覚悟で血を分け与えます。


息も絶え絶えの麗日さんが幸せそうに


「ヒミコちゃん」 と呼びかけ


死にゆくトガちゃんが世界で一番カァイイ笑顔で


「はあい」


と応える場面では、もう胸が苦しくなるくらい泣きました。



涙がこんなに出たのは多分小さい頃岩で薬指を潰したとき以来ですね…

薬指の爪がなんかどっかにいったとき以来です。多分…


次男が不登校になったときでもこんなに泣かなかったナア…



命を失うことが分かっていても、自分を全て受け入れてくれた麗日さんを通じて、やっと自分自身をまるごと認めるという自己受容を完成させたトガちゃんはきっとすごく幸せだったことでしょう。


それでも生き残った麗日さんは、トガちゃんの死が、自分の力不足によるものだったのかもしれないと悩み苦しみます。


ただ彼女にはその苦しみを同じ目線で理解してくれる主人公がついていることが幸いでした。


トガちゃんを失ってしまった喪失感ごと理解し受け入れて、これからもヒーローとして頑張っていくのかな…  


本編の終わりはそう感じさせるものでした。



でも、最終巻の書き下ろしでトガちゃんが再登場してくれました。


麗日さんの夢の中で。

彼女はトガちゃんの血がまだ自分の中に残っているのかも、と友人に語ります。

最終的に、トガちゃんは麗日さんに、私は好きに生きたから、彼女も自分の幸せを優先して生きていっていいと伝え、笑顔でその背中を押します。


トガちゃんの血が記憶するトガちゃんの意思が、麗日さんの意識の中に共存し、彼女を励まし幸せに導いていく……


私にとってはそう思える終わり方でした。



そして、このエピソードは前回述べた臓器移植のお話と、私のこの同居人である謎記憶さんの関係を思い起こさせるもので、ただの偶然にも関わらず何だか一人でドキドキみなぎってしまいました。


そうしているうちに、一人でもだもだしているのが歯痒くなり、ここに吐き出すことにしたのです。


はあ…


言語化して出してすっきりしたナア…



願わくば私と同居しているこの謎記憶さんが、トガちゃんのように私を導いてくれるものであることを願っています。


トガちゃんというキャラクターは、彼女の生まれ持った、一番彼女らしい個性が、扱いの難しいものだったという理由で否定され続けた過去を持っています。


それでも私らしくいたいと、その個性を活かせる限られた場所で生きることを選んだ彼女は、とても前向きで自分に誠実な少女なのです。


彼女が人を傷つけるようになったのは彼女の生い立ちや環境が彼女に自分自身を傷つけさせてきたからです。

彼女が麗日さんと対峙したときに、自分の個性から生まれる衝動を糾弾されて、

「しまっとくと大きくなるの!」 

と叫ばされたときは、私自身も思い当たりがありすぎて大きく揺すぶられました。


「オカルト女子の独白」(下にリンク)でも書いたように、私も自分の生まれ持った特性を否定され続けたことで、
知らず知らずのうちにその主張が本当だと信じ込み、ついには自分で自分自身を虐待するようになっていた経験があるので、その気持ちがすごくよく分かるのです。


自分自身を体現するその特性をしまって、抑えつけて生きるのは死んでいるのと同じことです。

自分を生かすために、そのうち特性それ自体の力が強く反発して姿を現し始め、苦しみの末にこれが自分ですという主張を隠せなくなります。


私の中にもずっとトガちゃんがいます。


でも、私の中のトガちゃんに対するヒーロー、麗日さんの役目は私の子どもたちがこなしてくれましたので、今私の中にいるトガちゃんは、世界一カァイイ笑顔で笑っている幸せなトガちゃんなのです。



ヒロアカは、人間が持つ色んな特性をそれぞれ体現したようなキャラクター設定がされていて、その背景も結構丁寧に描かれているので感情移入しやすいです。


何より、正義が悪を叩きのめして終わり、という伝統的な少年ジャンプ的終わり方ではなく、

正義と悪が表裏一体であり、それぞれがお互いのための役割を果たしているのだということ、
そしてその本質は同じであるという事実に、

あくまで少年マンガの前提を守りつつも、矛盾を感じさせることなく近づけようとしている…

そんなところがすごいなあと思うのです。



どう言葉を連ねたところで作品の素晴らしさを表しきることは到底無理でしたが、もしかしたら一つの作品についてこんなに長く感想を述べたのは初めてかもしれません。


結局のところ…

ヒロアカ大好き!!

なのです!


(※以上は全て個人の感想です)


次は【水の記憶⑧】なのです★



『自分の内側で誰かが同居している件について』


『トガちゃんみたいな半生だったナア…』


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