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森美術館マシン・ラブ:ビデオゲーム 佐藤遼太郎 『アウトレット』

1999年 北海道生まれ、神奈川在住
佐藤涼太郎は、ビデオゲームに使われる3Dモデル、テクスチャ、アニメーションなどインターネット上に流通するデータ 「アセット」を素材に、ゲームエンジンを使って映像作品を作っています。きっかけは新型コロナウィルスのパンデミックでした。それまではリサイクルショップやネットオークションで購入した中古品などで作品を作っていましたが、コロナ禍による行動制限のため、CGの仮想空間上での制作を始めました。兵士、少女、動物、サラリーマンなどさまざまなキャラクターが繰り返し登場し、言葉なく展開する不条理な物語には、佐藤がよく見ていたMAD動画や短編小説の影響もあると言います。

写真シリーズ「ダミー・ライフ」では、インターネットから収集した写真に映る人や物などがアセットデータに置換されています。アセットの群像としての壁紙は、バラバラな人格が共存するネット上の世界であり、同時に現実世界を映し出しているのかもしれません。

本展の新作映像《アウトレット》では、どこかにありそうな街を舞台に、仮想空間を生きるアセットたちの様子が描かれています。その空間ではある一定の境界を越えると「無」 が拡がります。そんな世界を生きる名前も無いキャラクターたちに、私たちは現実世界からどのように想いを馳せることができるのでしょうか。


ロビー 2025年 インクジェットプリント、ビニールシート

ワールドビルディング Worldbuilding物語やゲームの舞台となる世界を作り上げることです。地図を描き、 都市や村や生態系をつくり、人々の風習や文化、また歴史を設定することで、現実には存在しないが、魅力的でリアルな世界を創造します。これにより、物語に深みと一貫性が生まれます。


「ダミー・ライフ」
 現実での日常写真をアセットに置き換える事で、現実空間にアセットが生活している様なリアルさが表現されている。
説明がなければ、素晴らしく精度の高い仮想空間を作ったと解釈されるかもしれない。
現実での関係性はこの作品からは分からないが、恐らく親しい親密な良好な関係性なのだろう事は伺える。
人間という枠組みを超えた異形であっても仲睦まじくしているのはある種のメッセージ性を感じる。
姿、形に囚われない、人種など些末な問題に感じるこの作品のメッセージが皆には分かるだろうか。

映像作品アウトレット
2025年
ビデオ11分26秒

森美術館は映像作品は1分限定で動画撮影OKとの事で。最初の映像作品だった事と、途中から見始めたので画像や映像は撮らなかった。

しかし、作品の意味は考えた。全部観た訳ではないけれど、そして文字やナレーションなど存在せず、見る人間が考えなければならない映像作品である事がこの作品の特徴だろう。

作成された世界の境界線から出る為に、永遠と走り続ける兵士。息も絶え絶えになりながら、永遠に。
全く同じ顔のアバターの兵士達の和やかな集合写真。

永遠と走り続けるF1レーサー。迷路のような永遠に続く道を(或いは生成され続ける道を)出口へ向かって走り続ける。

誰も乗ってないメリーゴーランドが加速度的に速さが増していく。その象徴的なシーンと共に世界の混沌(カオス)化が加速していく。

建築の構成物が竜巻の渦のように空を飛び、それも加速度的に速度を増していく。

世界にランダムに生成物が出現するなんて普通のこと。

ある種、諦めた住人はダンスを呑気に外で踊ってる。

大多数の常識あるアセット達はこの世界からの逃走を試みて雪崩のように世界の『境界線』へ突撃していく。

悲劇か喜劇か。音楽も相まって、どちらの側面も有しているように感じる。感じた。


答え合わせをしよう。
タイトルのアウトレット
”outlet”のおもな意味は、「排気口」「はけ口」「出口」です。 ものや商品が出ていく場所という概念から、「販売所」や「小売店」、「販売経路」という意味も持っています。
そして『アウトレット品』ともよく使う言葉だ。

アセットとは
アセット(Asset)とは、ゲーム開発においてゲームの素材となるデータや部品のことを指します。ゲームのビジュアルや音響、ゲームプレイそのものを構成する要素で、ゲーム開発において欠かせない要素です。

★UnityやUnreal Engineなどではアセット単位でテクスチャ画像付きのモデルデータを無料配布したり有料販売している世界中のデベロッパーが開発した素材や部品を「アセット」として購入し、ゲーム開発に使用できる。

この点を考慮して作品を見つめ直すと、【出口】と【アウトレット品】→outlet の言葉に2つの意味が使用されている作品だと理解できる。

アウトレット品は深読みのしすぎだとしても。

【出口】というタイトルは、この世界で意思を持って生活する彼らの望み、あるいは目指す先として映像が作られている。そこに終着、帰結するように。

その過程で見せられるシーンに鑑賞者が何を思うか。
それが、この作品の重要な【意味】である。

佐藤遼太郎さんの作品解説などが載ってる、公式サイト?です。リンク貼っておきますね。

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