実母との折り合いが悪い
「家族なんだから」という言葉が嫌いだ。
私には兄弟がいない。父はすでに他界した。つまり肉親は母ひとり。この母とは、どうにもそりが合わない。
子どもの頃は仲の良い母娘だったと思う。でもそれは私の世界の狭さ故に成り立っていた関係だったと今ならわかる。人には人の大切なものがあって、何を大切と思うか、何を大切にしたいかは人それぞれ。本来それは他者から害されるべきものではないはずなのに、母はよく切り札のように言う。「家族なんだから」と。
しかし、自分も子を持って思う。親を選ばずに生まれた子どもに対して「家族なんだから」という変えようのない事実を武器にしてはならない。子を思う気持ちがあれば、親こそそう思うはずなのに。
家族だからといって、全員の価値観をぴったり揃えるなんて到底無理だ。揃わない部分は「じゃあここはそれぞれってことで」と許容しあってうまくやればいいと思う。なのになんで「家族なんだから」の一言で、私は私の価値観を押しつぶされなければなれないのか。
でも、私のそんな感情にすら「家族なんだから」の呪いが掛かっていることにも気付いている。
なんで母はわかってくれないんだろう。わかってほしい。そう期待し続けてしまうのは、きっと紛れもなく母が私の家族だからだ。他人だったら諦められることが、簡単には割り切れない。
本当はもう諦めたい。諦めてほしい。家族だからこそ、お互い諦め合っていきたい。きっと母にはわかってもらえっこないけれど。