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金属の声

冷たい金属の表面を指でなぞると、それぞれの性質が物語を語りかけてくる。鋳鉄は脆い。一見強靭に見えるその姿とは裏腹に、一度のショックで無残にも砕け散る。まるで強がりを見せる人の心のように。

錫は儚い。温もりに触れるだけで形を変え、やがて風化していく。その姿は、確かにそこにあるのに、時の流れと共に消えゆく夏の思い出のようだ。

そして鋼鉄は強い。幾度となく打ち付けられ、熱に焼かれながらも、その芯は決して折れない。しかし、その強さの中にも、わずかな柔軟性を持ち合わせている。完全な硬さではなく、しなやかさを備えているからこそ、真の強さとなるのだ。

人の心もまた、これらの金属のように、脆く、儚く、そして時に強い。それぞれの性質が織りなす物語は、私たちの人生そのものを映し出している。

鋼鉄になりたい。だけど錫のように温もりで形を変え、鋳鉄にしか生きられない。SOSが出せない。だけど、精一杯頑張って出したSOSを「守りたいんだ」そう言っていた人が気が付かないのか、気がついているのに保身にはしたのかわからないけど、疑いながら生きていくのであれば鋳鉄のように無残にも砕け散るのも悪くない。


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-美野_Yoshino-
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