今日は何の日(2020/2/29)

この記事は、以下の動画の補足となっています。

https://youtu.be/BqZdyc6BCQ4

動画の内容の要約は以下の通りです。

・閏年:暦と季節のずれを補正するもの
  ・400年間で97回
・夏季オリンピック開催年:基本的に閏年
  ・ただし、例外あり
・2月29日生まれ:年をとるタイミングは法的には2月28日午後12時

1. 閏日

西暦年が4で割り切れる年は(原則として)閏年となります。
太陽暦では、閏年には2月の日数が1日増加します。この付け加えられた日が閏日です。
一般に2月29日を閏日とすることが多いですが、ユリウス暦からグレゴリオ暦に改暦した歴史的な理由から2月24日を閏日とする国もあるようです。

2. 閏月と閏秒

閏年や閏日という言葉のほかに、閏月や閏秒という言葉があります。

2-1. 閏月
閏月は旧暦と関係があります。
旧暦では、1か月を月の満ち欠けの周期としていました。そのため、1か月は29日か30日となり、1年間は354日前後となりました。太陽暦では、1年間が約365日なので、1年間でおよそ11日ほど太陽暦とずれてしまいます。これでは季節を示す暦としては機能しなくなってしまいます。そこで、このずれを補正するために、数年に一度、1か月を追加しました。これを閏月といいます。

ちなみに、一部の国で2月24日が閏日とされる理由には、この閏月が関係しています。
現在のグレゴリオ暦の元となった古代のローマ暦では、現在の3月に相当する月(Martius:March(3月)に相当)が正月でした。そして、閏年には年末の月(Februarius:February(2月)に相当)の後に閏月を挿入して、太陽年と暦年との誤差を調整していました。
このとき「Februarius の長さを23日とし、残りを閏月とする」としていたため、現在でも一部の国では2月23日の翌日である2月24日を閏日としています。

2-2. 閏秒
閏秒は、閏日や閏月とは全く違った目的で導入されます。
かつて、1日の長さの基準は(太陽に対する)地球の(平均的な)自転周期でした。そして、その1/24を1時間、さらにその1/60を1分、その1/60を1秒としました。その後、時間の計測技術が発達し原子時計というものが発明されると、正確な時間が測定できるようになり、地球の自転速度は一定ではないということがわかりました。
すると、地球の自転速度によって定められる時刻と原子時計によって決まる時刻にずれが生じるようになります。このずれを補正するために導入されるものが閏秒です。閏秒は2019年末までに27回導入されました。閏秒を実施する際には、1秒を追加することも削除することもあります。ただし、今までに1秒が削除されたことはありません。
将来の閏秒実施時期については、地球の自転速度の変化を長期にわたって予測することができないため、知ることができません。

3. 「閏」

ところで「閏」という文字は、閏年や閏秒といったような言葉以外にはあまり使われません。(全くないわけではありません。例えば正閏(セイジュン:正統とそうでない系統、または平年と閏年)という言葉があります。)

「閏」の字は「門」の中に「王」と書きます。これは、うるう月には王が門の中にとどまることからきているようです。ここから、「閏」は「追加された日や月」という意味になりました。また、余分、余りという意味もあります。(閏日は追加された「余分な」日)

「閏」の読みは、音読みが「ジュン」、訓読みが「うるう」で、「閏年」の読みは、「うるうどし」または、「ジュンネン」です。「うるう」という読みは「潤」の字の訓「うるおう」から来ているようです。

4. 閏年と皇紀

グレゴリオ暦では、「西暦年が4で割り切れる年は閏年、ただし100で割り切れるが400で割り切れない年は平年」とされています。しかし、日本においては公式には閏年の判定に西暦ではなく皇紀(神武天皇即位紀元)というものが用いられることになっています。その方法を定めているのが、以下の法令です。

勅令第九十号
神武天皇即位紀元年数ノ四ヲ以テ整除シ得ヘキ年ヲ閏年トス
但シ紀元年数ヨリ六百六十ヲ減シテ百ヲ以テ整除シ得ヘキモノノ中更ニ四ヲ以テ商ヲ整除シ得サル年ハ平年トス
(閏年ニ関スル件・明治三十一年五月十一日勅令第九十号)

要するに、
1. 皇紀年数が4で割り切れるとき、閏年とする。
2. ただし、皇紀年数から660をひいたとき(つまり皇紀を西暦に直したとき)、100で割り切れる年で、かつ100で割った時の商が4で割り切れない年は平年とする。

というもので、結局この方法はグレゴリオ暦で計算したものと同じになります。(皇紀を西暦に直して計算しているだけ)

この法令は、明治31年(1898年)5月10日に公布されました。この法令は、旧暦から新暦への改暦を行った際に、閏年の例外についての記述が脱落していたため、それを修正するために作られました。

太陽暦ハ、太陽ノ躔度ニ従テ月ヲ立ツ、日子多少ノ異アリト雖モ、季候早晩ノ変ナク、四歳毎ニ一日ノ閏ヲ置キ、七千年後僅ニ一日ノ差ヲ生ズルニ過ギズ
明治五年太政官布告第三百三十七号(改暦ノ布告)より抜粋

ちなみに、この「改暦の布告」では「7000年後にわずかに1日の差を生ずるに過ぎず」と記述されていますが、グリゴレオ暦では実際には3000年で1日程度のずれが生じます。

ところで皇紀とは何かというと、日本書紀によって定められた紀元のことで、神武天皇が即位されたとされる年(西暦紀元前660年)を元年としたものです。現在では皇紀はほとんど使用されませんが、閏年について定めた法令の中に今も残っているのです。(勅令第九十号や改暦の布告は、現在も有効な法令です。)

5. 民法第143条

動画では、法的には誕生日前日が終了する瞬間に年を取ると説明しました。しかし、民法第143条については詳しく説明できませんでした。ここでは、民法第143条に従った具体的な計算方法について説明します。

第143条(暦による期間の計算)
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

1. 月・年の初めから起算するとき
単純にその月・年を第1の月・年として所定の月数・年数を数えます。
そして、最後にあたる月・年の末日に期間が満了します。
その際、月の大小や平年・閏年の違いは無視します。(143条1項)

例:2020年1月1日から……
3か月間:1月を最初の月(1か月目)として計算します。
そして、3か月後の3月の末日(3/31)が満了日となります。(つまり、1月1日から3月31日の終わりまでが、1月1日から3か月間の期間)
5年間:5年後の2024年の末日(12/31)が満了日となります。

2. 月・年の途中から起算するとき
起算日の翌月・翌年から月数・年数を数えます。
そして、最後の月・年においてその起算日に当たる日(応当日:おうとうび)の前日に期間が満了します。

例:2020年3月10日から3か月間
4月から数え始めます。すると3か月目は6月なので、6月10日が応当日となります。なので、満了日はその前日の6月9日となります。(つまり3月10日から6月9日まで

3. 応当日が存在しない場合
最後の月に応当日がないときは、その最後の月の末日に満了します。

例:2020年2月29日から2年間
翌年から数え始めます。すると2年目は2022年2月なので、2022年2月29日が応当日となるはずですが、2022年の2月には29日が存在しません。
この場合、2022年2月の末日(2月28日)が満了日となります。(つまり2020年2月29日から2022年2月28日まで

年齢計算ニ関スル法律より、年齢は出生日から数え始めるので、応当日は誕生日当日、満了日はその前日となります。そして、満了日が終了する瞬間に期間が満了するので、年を取るタイミングは誕生日前日の午後12時(24時)となります。

6. 早生まれ

「早生まれ」とは1月1日~4月1日に生まれた人のことを言います。法的な年齢計算の方法が理解できると、早生まれがなぜ4月1日までなのかも理解できます。

小学校の学年は、4月1日に始まり翌年の3月31日に終わります。そして、学校教育法第17条によると、満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから子どもを小学校へ入学させることになります。

第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
学校教育法第17条より抜粋

すると、4月1日生まれの子どもは、3月31日の終了とともに6歳となり、その翌日である4月1日には満6歳になっているとみなされるため、4月1日に始まる学年から就学することになります。
それに対して、4月2日生まれの子どもは、4月1日の終了で6歳となるため、翌4月2日以後の最初の学年から就学することになります。つまり、4月1日生まれの子どもよりも1年遅れて就学することになります。

1月1日~4月1日生まれの人を早生まれと呼ぶ理由は、同じ年の4月2日以降に生まれたほかの子供よりも早く学校に入学するからです。なお、同学年の中では誕生日が来るタイミングは遅くなります。

7. 参考文献

星と宇宙の通になる本 渡部好恵・渡部潤一(インデックス・コミュニケーションズ)

明治改暦、太政官布告のもう一つの間違い





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