🎁the monogatary #98 | 好きにしろ

「好きにしろ」。その言葉が僕の胸に響く。
響く。永遠と。

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【久本の証言】

「奴？あぁ…奴ね。良い奴だよ、彼は。真面目の皮を被っているというか。本当は彼、もっと破天荒だと思うんだよね。まあみんな何かしらの仮面は被っているのだろうけど。彼はそれが厚いというか。何というか。彼と知り合ってまだ日は浅いけど。それでも。彼が優しい奴だということは。俺でも分かる。中1の時から。ずっと遠くで見てて。俺はスキー部だから。軟式野球部とはあんまり縁がなかったけど。彼はとにかく目立ってた。英語も出来る。野球も出来る。優しい。三種の神器ってやつ。あの頃はきっと。本人も楽しかったんじゃないかな。ただ。高1になってから。雲行きが怪しくなったね。色々あるだろうに。彼は硬式野球部に所属して。あの硬式野球部だよ？練習がひたすらに辛くて。監督は厳しくて。普通の人ならつい敬遠してしまいそうな。あの硬式野球部に。彼は入ったんだ。その頃から。彼は笑わなくなった。中学の修学旅行ではあんなに楽しそうに笑っていたのに。彼は笑わなくなった。なぜなのか。それは分からない。ただ。その業はきっとあまりにも深くて。深すぎるあまり。彼の自我は崩壊したんだと思う。よく青春なんていうけど。彼にとって。きっとそれは無縁の世界で。きっとそれは遥か先のもので。きっとそれは奇跡なんだと思う。何かに没頭すること。それは確かに素晴らしいことだけど。でも。やっぱり。どんな人でも。休息というものは必要で…。」