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Photo by
hiyamaryuiti
祖母、転ぶ。そのあとすぐに忘れる
ひやっとした。
おばが先に家を出て、祖母が玄関を出て、ドアが閉まったあと。
どーん。
外から何か鈍い音が。
(ん……。なに、いまの音)
すると、外からおばの声がし始める。
何かあった。でもよく聞こえない。
「〇×▽※転んだ?」
(えっ!)
少ししてドアが開くと、おばが、今日は自分一人で病院行くから、
「あとお願い」と頼まれる。
祖母は玄関を出てすぐ、靴がうまく履けていなかったとかで、つまずいてしまい、その際、指を少し切ってしまった。
幸い、転んで骨折なんてことにはならなかった。
それから30分くらい経って、おばが帰宅。
おばと私がさっきあったことを話していたら、
祖母は、自分が玄関を出たあと転んだことをすべて忘れていた。
祖母「転んだ……?」
おば「……(ちょっと笑う)」
綾花(私)「ああ、これだよ。こうやってボケてるとメリットもあるんだね」
こんなにきれいに消えるのか、と拍子抜けした。
ときどき祖母が言うことに、イライラして怒ってしまうことがある。
けど、こんな風に祖母はみんな忘れてしまうのだから、
いちいち私が本気で怒ったり嘆いたりするのって、すっごく無意味な気がしてきた。言ったところで、記憶に残らないし。
これからは、なるべく怒らないようにしたい。
でも、話しかけるのはやめない。
だって私も、祖母に負けず劣らず、頑固だから。
その後、ネット通販で介護用の履きやすい靴を買いました。