今日のこと④

いま、たこ焼きを持って電車に乗るという、
ここ最近で一番の罪悪を犯している。
たこ焼きのカリッとした食感を思い出させぬ柔らかい温かみを携えて帰路につく。

今日は祝日。
最近祝日前は何度もカレンダーを見て
「あした祝日だよね、休みだよね」と確認してしまう。
なんなら祝日の朝に社用携帯を見て
だれも出社報告してないのを確認してホッと胸を撫で下ろすこともある。

日付に疎くなったのか、鋭くなったのか。

今日出掛けにポストを覗いた。
「住民の方へお願い」と題して配布された文書には
22時以降の洗濯機の使用を控えること、
大きな声を出さないこと、
扉を閉めるときには勢いに気をつけること、
などいくつかの配慮義務、といえる項目が並んでいた。

申し訳程度に書かれた「この文書は全入居者へ配っています」というだれにも責任を押し付けないことば。
その文面を見てなんだかいやになった。

きっと、どこかの家からどこかの家へクレームが入ったのだろう。
一対一で指摘するには角が立つから、と
第一弾、周知事項として配布された封筒。

いまはこんな些細なことにも傷つく。
当事者がだれなのかも指摘されない問題に
なんで傷ついてるのかも分からない。
心当たりがあるからだろうか。

たこ焼きを持って電車に乗っている今の私のほうが、よっぽど周囲に迷惑してるのではないか。

配布物の内容を上回る大罪を犯して、
落ち着きたかったのかもしれないな。
優先順位は当人によって変わるので、
罪の大きさの認識はわたしにとって、という注意書きすら必要だろうか。

はあ。溜め息が出る。

今日はただ、たこ焼きが食べたかっただけだけど。

傷つきが増幅されるのは
空腹だからだ。

わたしを慰める温かみが消えないうちに
おうちへ帰ろう。