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一匹 一頭 そして ひとり

9月の連休。

そろそろ人が、周りを窺いながらも動き始めた頃合いでもあったような覚えがある。

突然浮かんだ「水族館に行きたい」気持ちと、同時に浮かぶは「海鮮丼が食べたい」気持ち。

ある面で考えれば相反する想いに、自分もやや戸惑う。

「起きてから、観たいか食べたいか考えればいいか(言い方)」

とは思ったけれど、さてはて今の情勢下「水族館はどのように営業しているのだろうか?」と調べたところ、時間にして約20分ごとに区切られた入場予約券なるものが。

なるほど、明日これを予約してから行けばいいのか。

と、とある時間をクリックしてみると「満」の文字。

なるほど、入場制限に加え連休マジックでずらりと並ぶは「満」の文字。

某チケット発売日を思わせるような連続クリックを繰り出し(素性がバレる)、進んでいけば14:20あたりが有難く残っており、間隙与えず予約完了ページに辿り着いていた。


「人数:1」


そうこうして、水族館への単騎乗り込みが決定した。

「そうこうして」って、簡単なことばでありつつすごく行動しているように見せる便利なことばだよね。こわい。


電車に乗ってから気付く。

「連休、水族館、、ひとり、、、、????」

浮かぶは人混みと、女子軍の「かわいい」の黄色い声に加えて寄り添い対向通路を並列歩行してくるカップルたち。

カップルの歩行には一列縦隊を推奨するわたしとしては大失態。


「間違ったかもしれない。」


最寄り駅に辿り着くまでに、いかに二列横隊カップルから身を躱すかを脳内シミュレートするまでだった。



「14:20からご予約のお客様~」

いざ。

ぞろぞろと進む列。カップル、子連れに二世帯家族。

やはりそう簡単に単騎は見当たらない。


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入場して進むと広がるは幻想的な風景。

と言いたいところだが。

残念ながら近眼×鳥目の持ち主にはきつい、

明暗の差についていけず、とても見えない(語彙)。


溜息をついてそそくさと進もうとしたが、目を凝らすと浮遊するクラゲたち。

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「いるじゃ~ん(当たり前)」

あっという間に夢中で追いかけていましたとさ。


暫くして、クラゲ専門の館ではなかったことを思い出し意を決して進んでいく。


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マンタのトンネル(命名)に、

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スマイルマンタ。

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だるまさんがころんだペンギン、

意地でも泳がない、むしろ誠意すら感じる。

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あれに見えるはゴマフアザラシ、


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「よう、おまえもペンギンしか見ないのか?」

居場所がペンギンとアザラシ、そしてコツメカワウソのお隣、

ひねくれもののオットセイは、悠々自適に泳ぎつつもそんな心の声が漏れ聞こえてくる。

「いやいやそんな、ここはひとり同士仲良くしましょうや」

ごまをするように平身低頭でガラス面にすり寄るわたくし。


まんまるで透き通った目、滑らかな身体つき、

暫く居れば人懐っこそうな表情。

身体の表面のあぶくはついては消えを繰り返す。

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見せつけるように浮遊を繰り返すオットセイに心惹かれて暫く佇んだ。

いまでも一番思い返すのはこの子。元気かな。


気付けば周りの喧騒も気にならず。

カップルの二列横隊以外に、なにを気にしていたのだろうと思うくらいに心が安らいだ。

無理に感想を口に出すために準備することも、

だれかに合わせて進むことも、「次は何が見たい」と提案することもない。

だれかの手とはぐれることもない。


一匹と 一頭と そしてわたしがひとり。

それ以上でも以下でもないこの空間。

これほど真剣に見て、目を合わせて向き合おうとした水族館は初めてだったかもしれない。


その後、イルカのショーを見て制限時間の目安2時間が経過。

しゃんとした気持ちで、またの機会にと水族館をあとにしましたとさ。

ああ、楽しかった。



先日知り合いと話した。

「きっと癒しがほしいんだよね~」

知り合いは温泉に癒しを求め、わたしは自然と水族館に求めた。

某ウイルスが従来のノーマルを乗っ取り、非現実的な毎日を過ごすからこそ、今までの自分とは異なる、いわゆるニューノーマルに癒しを求めているのかもしれない。


詰まるところ、なにが言いたいかって?

「ニューノーマル」って言ってみたかっただけよ。


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