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想像を裏切るほどに超王道RPG『メタファー:リファンタジオ』レビュー&感想

 アトラス新作である『メタファー:リファンタジオ』をクリアしました。良いゲームでした、アトラスの大ファンですが大満足です。
 このゲームを一言で表すならば"ペルソナ風ハイファンタジーゲーム"です。コア制作陣の思想はここまで洗練されるに至ったのかと感動しました。
 てらいのない王道RPGですので、もちろんP3~P5R・ペルソナシリーズを未プレイの方も楽しめます。むしろアトラス作品を知らない方のほうが正しくこのゲームを受け止めることができると思われます。

 全世界で100万本の売上を達成した本作ではありますが日本での評判をあまり耳にしないので記事に起こしました。検索の一助となれば幸いです。


ネタバレ無しのレビュー

主人公(声:花江夏樹)の苦しむ演技がアニメ鬼滅の刃並に見ることができる

概要

簡単なあらすじ
 暗殺未遂事件後に主人公の住む里へ逃げ込んできた王子。日々衰弱していき、ついに眠り続けてしまうようになった。彼を蝕む呪いを解く術を探すため主人公は王都へ出向き、ひょんなことから王位争奪戦に巻き込まれてしまう。現実が嫌になったらたまには本を開こう!超王道ファンタジーゲーム。

プレイ時間:69時間(難易度NOMAL&王の資質MAX&支援者全員MAX&全◯の試練クリア済)
ゲームシステム:敵の弱点を突く、プレスターンバトル(メガテンやペルソナシリーズと同じ)。序盤の難易度は真Ⅴに近いが攻撃手段を多く持つ後半はかなりヌルくなる。
シナリオ:サクサクと展開していくためストレスがない。しばしば窮地に追いやられるため中だるみもなく夢中になってプレイした。シナリオのテンポが良すぎるからこそダンジョン攻略等で一時中断すると逆にストレスでした。
キャラクター:イイ奴博覧会。気のおけないイイ奴ばかり。

このゲームの好きなところ

・超王道PRG

 ファンタジー世界を旅する、古き良きRPGを思わせるのが本作です。プレイ後もその印象は変わりません。最近プレイしたゲームで例えるとユニコーンオーバーロードのような王道ファンタジーでした。

巨大生物の痕跡って興奮するよな

 また王位継承を巡る戦いの中で宿命とも呼べる強敵に出会います。
 圧倒的なカリスマ性を持つ将軍・ルイは作中においてキーマンです。なによりも副島さんのキャラデザが大勝利すぎる。

中村悠一・マフィア梶田・杉田智和が声優を務めるゲーム

 またインタビューで『指輪物語』等の古典ファンタジーをたくさんみたと仰られていた通り、UIデザイン部分も古き良き児童文学の挿絵のようです。ガリバー旅行記っぽさがあります。

 不安や悩みを持つキャラクター達と出会い、親交を深め、旅の仲間となる。主人公を中心に集った種族もバラバラな彼らは一体何を成していくのか?
 王子のために旅をはじめた主人公。しかし王座を巡る戦いに担ぎ出されてしまいますが果たして結末はいかに?

・超王道RPGなのに不穏

 王道RPGでありますがどこか不穏なところもあります。

初見時は声が出た

 このインパクトが強すぎる敵の名称はニンゲンです。
 またOP映像でも東京タワーが映りますし、主人公の愛読書の内容も現代社会に似た世界のよう。ゲームタイトルも『メタファー』ですし、この世界はどのような秘密を抱えているのか……。

・ロードによるストレスが(ほぼ)無い

街の移動ロード中の演出もおしゃれすぎる

 PS5でプレイしましたがロードによるストレスがほぼありませんでした。唯一、終盤のバトルであるスキルを使い敵を倒した場合、若干画面が固まることがあるぐらいでしょうか。
 アトラス初のPS5新作タイトルでもあるので気合を感じました。(※PS3Rはリマスターであるため……)

・1周目でも全支援コミュをMAXにできる

パリパス族とかいう合法ケモミミ民族

 本作は特定キャラとの絆イベントをこなす、いわゆる支援コミュがあります。これを1週目でも全員MAXにできました。ダンジョンは一日で踏破する以外の特別なことはしていません。
 ペルソナは取りこぼすキャラも多かったので本当にありがたかったです。

 またどのキャラクターのイベントもよかった。ククルスとか……。刺さる人には一生癒えない傷になる男なのでみなさんに出会ってほしいです。
 またコミュMAXにすると終盤イベント等にセリフが一部追加されます!

・プレイスタイルにあわせた戦闘レベルを選べる

 難易度NOMALでプレイしましたが苦戦のあまり、レベル上げ&リトライを含め10時間以上かけたボスがいます(※任意ボス)。倒した後は嬉しすぎてマサイのリズムで踊りました。ある意味ラスボスより手応えのある一連のボス、ぜひチャレンジしてください!
 このゲームはどうしようもなくなったらレベル上げさえすれば大体なんとかなります。敵のレベル+3あれば十分でしょうか。難易度(ほぼいつでも変更可)によって経験値の取得等倍が変わるので上手く利用してください。
 ただ私のように変なプライドが邪魔をして難易度を下げたくない方は、ダンジョンをボス部屋手前の猫チャンまで突っ切り、モアの部屋→ダンジョンでレベル上げ→モアの部屋(以下ループ)で戦いやすい敵を復活させてレベル上げをする手もあります。引き寄せ結晶から出現する敵ですらしんどいあなたへおすすめです。

・期待に応えてくれる良シナリオ

 アトラスファンなので新作が出たらとりあえず買うのですが、そんな粘着ぎみの面倒くさいオタクにも応えてくれたシナリオでした。
 本作は王の暗殺をきっかけに王位争奪戦がはじまります。選挙による民意によって王が決められるので有象無象の候補者が乱立します。その中で主人公はいかに振る舞うのか。

愉快な候補者も多数いる

 この世界では8つの種族が存在し、ある種族は職にもつけないような酷い差別を受けています。また貧富の差も激しく、国内の混乱が悪化していくと路上で死体が野ざらしになっている光景も珍しくはなくなります。序盤からいるモブの死を見かけた時は悲しくなりました。
 理想の王とは?理想の政治とは?旅をする中で主人公と仲間たちは問われ続けます。

ベルギッタの支援者イベント好きすぎる

 また"人は独りでは生きていけない"という物語を貫く軸があります。孤独が人を蝕んでいく、私も実感を伴う年代になりました。乙女ゲームをはじめとした恋愛ゲームを好んでやるのも、孤独な人間の隣に理解者があらわれ世界が変わっていく様子をみたいからです。
 キャラクター達とのコミュがあるゲームだからこそ、制作の中核を担う方々がペルソナチームだからこその温かさでした。システム部分もペルソナ風ですが、大本の思想、根っこの部分もペルソナなんですよね。人は誰かを愛さずにはいられない、別に恋愛や情愛以外にも愛情を示す言葉はたくさんあります。友情、親愛、慈愛……。Pシリーズの人間関係が好きな方には手放しでおすすめできるゲームです。

握手をする(手を繋ぐ)ことで信頼を示す、物語やシステム面でも一貫しています。

 この作品はP3R発売時に比べても国内ではプロモーションを大々的に行っていませんし、ゲームの公式サイトを見ただけでは掴みの弱い作品だとも思います。だからこそ口コミでジワ売れしていくタイプだと思いますので、今回記事を書いた次第です。100万本販売以上のポテンシャルを持っている作品だと思います。

このゲームがおすすめの方

・久しぶりに日本製PRGがやりたい人
・ペルソナシリーズが好きな人
・最近のSNSがしんどいという人
・副島さんのキャラデザが好きな人(絶対に満足できます)
「オレは馬鹿だからわからねぇけどよ……」と前置きをしだす細谷佳正のキャラが見たい人

感動した

 本作はネタバレが楽しみを損なうタイプのゲームではありませんが、やはり"謎"をキャラクター達と追いかける方が楽しめる作品です。
 いわゆる完全版の可能性については、本作で美しく完結するため待つ必要はないと思います。気になった時がやり時!買いましょう!
 しかしながらインタビューでマルチプラットフォーム対応についてお話されていたので某新しいハードが発売したならばあるかも?&P5Rのように新キャラ&新ダンジョン追加形式かも?という印象です。

ネタバレ有りの感想

 戦闘メインBGMにかっこいいラップが入ってるな……と思ったらリアルお坊さんによる説法なんですね、生演奏(?)感動しました。
↓説法演奏開始時間に合わせてリンクを貼りましたので気になる方はどうぞ↓

 どのBGMも作品を盛り上げ支えるような重厚感があり本当によかったです。目黒サウンドに外れがなさすぎる。Pシリーズのようなポップさはありませんが(ファンタジーだから)、メロディラインではなく音圧やその複雑さで勝負しようとするような、上手く言えませんがゲーム音楽の良さを改めて教えてくれました。

・バトル面

 このゲームは序盤から物理反射の敵がいますし、正直なところ戦闘が結構めんどくさかったです。特に初めの頃はMP不足が深刻かつMP補充ができるアイテムの店売りも無限ではありません。1日でダンジョンを踏破したい民なので強めのモンスターをスルーしてボスを倒しに行きました。
 まあ、竜の試練で深刻なレベル不足に苦しむことになるのですが……。

正直、資格試験に合格した時より嬉しかった

 竜の試練は任意のクエストなので、最初の星の毒を喰らいし者すら倒せない時は何度も「やめてしまおうか……」がもたげました。しかしレベルを56→62まで上げて幾度もゲームオーバーを繰り返し、戦闘をやり直し、ようやく勝てた時はあまりに嬉しくて暗い部屋の中で一人声を上げました。ここまで4時間経過。他2体のドラゴンはサクッと倒し、そして最後の全ての人の魂を喰らう者でまた詰まりました。星の毒~では頑張ればいけるかもと感じた予感すら一切なく。
 ここで心折れそうになりましたがぜって~負けね~😡俺がこのユークロニア連合王国を救う😡と奮起し、5時間後に辛くも勝利しました。嬉しさのあまり、踊った。SNS仕草やオタク誇張ではなく事実踊りました。人間って喜びが最高潮になると踊るんだ……といい経験にもなりました。
 でもね。

やりすぎた感はある

 ラストダンジョンでレベル上げをしすぎてラスボスは楽勝でした。せっかくだから全員のアーキタイプをロイヤルに&Lv20にした結果です。ラスダンは魚無限湧きのところで気絶させてバフかけまくって炎で焼くと経験値が美味しいです。

・シナリオ面

ここで死なせてもいい配役ではないからゾルバは再登場すると確信していたけれど正直笑いました。令和の世でも杉田・中村を擦っているアトラス、ありがとう。

 不安や怖れを制御できなくなり、感情を発散するために怒りをぶつけ、しまいには肥大した感情を抱えきれずに怪物になってしまう。最近それが嫌でSNSから遠ざかっていたので我が事のように感じて物語を追っていました。Xでみかける様々なポストへのお気持ちが止まらなくなり「このままでは怪物になってしまう……」とこの2ヶ月ほど距離を置く努力をしているので、本当になんというか、メタファーだけに現代社会をメタっていますね。

ハイザメを臣下ではなく友人として迎えた点にこのゲームらしさがあります

 Pシリーズもエコーチェンバー現象に振り回される群衆を描いていますし、同時に彼らと主人公一行の違いとして信頼できる仲間達を挙げています。不安や恐れは無くなることはないからこそ向き合い、気のおけない友人達と力を合わせれば前人未踏の偉業を成し遂げることができる。Pシリーズと思想の部分を同一としているので良い意味でペルソナ感がありました。

ラスボスに対して辛辣すぎる

 震災後、圧倒的な理不尽に蹂躙されることがあるという無常観を根底に置いた作品も多いような気がします。積み上げてきた努力や築き上げた人間関係を理由もなくただそこにいたからと根こそぎ奪われてしまうことがある。これまであった不条理劇とはまたエンタメ性の異なる雰囲気のものです。
 でもだからこそ未来を信じて賢くしたたかに生きなきゃね……という諦観のようなメッセージが本作にはありました。

モアの正体がうっすらわかっていくにつれ切なくなりました

 プレイヤーを"導く者"として物語に参加させる展開もよかったです。MOONを思い出しました、思想は真逆ですが。
 またゲームが"幻想"を大切にしなさいと語りだす時代になったのかと思いました。金色のコルダ3の如月律くんの「夢は現実より弱いものなのか」という大好きなセリフを思い返したりしました。

旅情あふれすぎる、このゲームはアートワークがよすぎ

 支援者イベントは皆よかったです。アロンゾは色々と度肝を抜かれました、主人公に依存しすぎである。
 また恋愛要素無しです!!!!と事前情報がありましたが、ラスダンに乗り込む前にコミュMAXのキャラからアクセサリーを貰えるイベントにて知らないカップリングの話をするキャラが複数人おり、笑いました。それは恋なんだよ。

 ここまで読んでくださった方がいましたらありがとうございました。素敵なゲーム体験でした。現実が嫌になったら本を読んだりゲームをして夢を取り戻しましょう。

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