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現地に行けないのでテレビで若冲「果蔬図巻」を眺める

伊藤若冲と言ったら『動植綵絵』に代表されるような細密な絵が思い浮かぶ。
ただ写実的というだけでなく、生きていることの生々しさまで描かれている。
ただ美しく生きているだけでなく老いた姿まで描くので、萎れたり枯れたりした葉っぱや傷ついた羽まで描く。
動物や植物の生と死を絵で表現しているのだと思う。

京都の福田美術館で10月12日から開催される展覧会「開館5周年記念 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」(略称:若冲激レア展)は、展覧会の名前だけでもう興味を惹かれた。
ましてや展覧会のメインビジュアルの鮮烈さは、ここ最近ではダントツだった。

タイトルにある「伊藤若冲の激レアな巻物」というのは、『果蔬図巻(かそずかん)』のこと。
ヨーロッパの個人が所有していたが、去年から福田美術館所蔵となったという作品で、全長3mもの長さで色とりどりの野菜や果物が描かれている。
若冲の絵が好きなので見たいのは山々だが、そう簡単に京都には行けない。
しかしテレビ東京の『新美の巨人たち』でたっぷり30分間特集してくれたのである。
全くありがたい話じゃないか。

『果蔬図巻』が描かれたのは寛政2年(1790)以前の若冲70代の頃で、『動植綵絵』から約30年後の作品。
筆使いは多少異なるものの、若冲らしく食べ頃なものだけでなく、まもなく枯れようとしている葉も完熟し切った果実も描かれていた。
私の好きな若冲だ。

描かれた野菜と果物はランダムで、旬だったり色合いだったり、そういった規則性は見られないそう。
学芸員の岡田さんは「思いつくままに描いたのでは」と言っていた。

色の使い方にも注目した。
テレビは寄りで見せてくれるのが嬉しい。
クワイの青みがかった灰色がとても印象的だった。

元々青物問屋の若旦那だった若冲。
野菜を描いたのはこの作品だけではない。
今回のnoteのトップにしたのは『果蔬涅槃図』という、釈迦涅槃図をモチーフにした作品。
描かれた年代は不明だが、こちらの方が水墨画の筆致が色濃いように思う。
若冲はいろいろなタイプの絵を残している。
まだまだ見たことのない若冲がどこかにあるのかもしれない。

伊藤若冲『果蔬涅槃図』 所蔵:京都国立博物館(出典:ColBase


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きんじょう めぐ
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