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【お出かけ】無花果を食べに銀座の名店へ

無花果というのは不思議だと思う。
そのまま洗って皮ごと食べることもできるし、煮ても良い。
ジャムにしても美味しい。
タルトやパフェの主役になることもある。
プチプチとした食感もあるし、トロリとした食感も楽しめる。
しかし果汁が滴るほどあるかと言ったらそうではない。
程よく水分を含んでいる。
見た目から苦手という人も多いようなのだが、私は好きだ。

銀座一丁目にある「アンリ・シャルパンティエ 銀座メゾン」に、無花果を食べに行った。
この店が入っている建物は東京都選定歴史的建造物にも指定されているのだが、中世ロマネスク風の建物にフランス洋菓子の名店が入っているのは、あまりにも相性が良い。
オープン前に店の前に行くと、フォンテーヌブロー派の画家による作品『ガブリエル・デストレとその妹』が描かれているシャッターが下りていた。
店がオープンする前からもうフレンチの世界に誘われている気になる。

店内は洋菓子売り場「ブティック」と喫茶スペース「サロン・ド・テ」に分かれている。
この日の目的は「サロン・ド・テ」でクレープ・シュゼットをいただくことで、前々から平日に夫の休みが取れたら行こうと計画していた。
前日にInstagramを確認したら、「クレープ・シュゼット 季節のフルーツ添え」は無花果だと書かれていて、このタイミングで私の好物である無花果が食べられることに私も夫も喜んだ。

店内は外観の様式を感じさせながらもモダンなインテリアだった。
しかしコンクリートと金属は相性が良い。

クレープ・シュゼットは目の前で仕上げてくれる。
オレンジのリキュールをたっぷり注いだフライパンは炎を上げる。
十分にアルコールが飛んだところで、クレープ生地にかけて味を染み込ませる。
この間ずっと爽やかな香りが漂ってきて、目も鼻も幸福感に包まれた。

店員は澱みなく商品について解説をしてくれる。
高級レストランのフロア担当は商品のことを説明をできる技量が求められるため、大変な仕事だといつも思う。
私には到底無理そうだ。

仕上げに濃厚なチェリーのソースを。
このクレープ・シュゼットは無花果だけでなく、オレンジやチェリーの味も堪能できるのだ。
コンポートされた無花果はとても柔らかく、チェリーのソースとの相性も抜群だった。
じっくりと丁寧に仕込まれた仕事を感じる。
大きくカットされた無花果をナイフでカットしても形は崩れない。
無花果を漬け込んだ赤ワインのソースも出してくれたのだが、アルコールは飛んでいて渋みもない。
サングリアのような爽やかさだった。

クレープ生地は程よい厚みで、限界までオレンジソースが染み込んでもなお弾力がある。
クレープ・シュゼットはチェリーソースのかかった無花果、オレンジソース、それにバニラアイスと、一度に全ての食感と香りと風味を口の中に入れることができる。
こんなにバラエティ豊かなのにも関わらず、バランスが取れている。
主役が無花果なのは当然で、他はあくまで脇役に徹している。
しつこい甘さは感じられなかったが、最後にオレンジソースを単独で舐めると流石に甘すぎた。
クレープ生地に吸わせることでこのオレンジソースがスイスイと口の中に入っていってしまったのは驚くべきことだった。

アンリ・シャルパンティエというと、一般的にはフィナンシェが有名だろう。
「サロン・ド・テ」では、温めたフィナンシェをいただくことができる。
こちらはバターがたっぷり染み込んだ焼き菓子で、温めたことでバターの香りもふんわり立ち上がる。

平日のお昼時ということもあって客は少なかった。
土日は整理番号が配布されるほどらしいので、可能なら平日にまた来たい。
この日はお昼にデザートを、八つ時にベトナムフォーをいただくという、普段とは違う食事をして銀座を後にしたのだった。


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きんじょう めぐ
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