『不穏の書、断章』フェルナンド・ぺソア
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この作品はベルナルド・ソアレス著、ということになっています。フェルナンド・ぺソアではないの?となりますが、これは彼の異名です。
では異名とは何かということを少しだけお話します。ペソアは自分自身の中に、沢山の人格(キャラクター)を作りました。有名なのはアルバロ・デ・カンポス、アルベルト・カエイロ、リカルド・レイスなどでしょうか。そして作品を書く際にペソアは、自身が書いたという形ではなく、「自分の中に作り上げた人格(異名)が著した」という体裁をとっています。それぞれの異名には性格があります。
今回は異名だけれど完全に本人と違う存在ではない、つまり半分本人半分作り上げたキャラ「半異名」という存在のベルナルド・ソアレスによる著『不穏の書』ということになります。
1つのストーリーというよりは、思考の断片がまとめられている、といった感じの本です。なので、意外とどのページから始めても読みやすいかもしれません。
「ふりをすること」「感覚」「夢」「旅」「河」「神」「死」。キーワードを挙げるならばこういった感じでしょう。半異名ということで半分本人です。彼の思考を、人生観を覗けるような本。
人は一般に未知のものを既知の概念で色付けする。文明とは事物にふさわしくない名前を与え、その結果で夢みることだ。(p.83)
人生はもつれてしまった糸玉だ。意味はあるが、それを知るためには解きほぐして、きちんと伸ばすか、注意深く巻きなおす必要がある。そのままでは答のない問題であり、中心を欠いた混乱でしかない。
こういったフレーズを読むのがお好きですか?哲学系、人生を考える系の本が好きな人は気に入ると思います。
1回でさらっと読むのではなく、何度も気の向いたときに開いて読みたい本。自分の思考や理解度、理解の仕方もそのたびに変わるかもしれない。あまり紹介らしい紹介ができずに終わってしまいましたが、とても気に入った1冊です。
もとになっている本:Livro do Desassossego