オススメの本の話【十二国記】
ロシアのウクライナ侵攻が始まってもう随分になりますよね。
人類が生まれてから、世界全てが平和だった事なんて無いと思うんです。常に世界のどこかで戦いがありますし、死ぬ必要のない人が死んでしまいますし、運命に抗おうとしている人がいます。今日はそんな人々の姿を描いた物語を紹介できたらな、と思います。実在した人の話でも、実在した国の話でもありません。けれど、過去にも今にも未来にもこの物語のように人生を紡いだ人がいる、と僕は感じます。
その物語の名前は「十二国記」。今回はシリーズ全体について話そうと思います。次回から僕のオススメの読む順でシリーズ紹介していきますよ〜
1,著者
小野不由美(おのふゆみ)さんは、「バースデイ・イブは眠れない」(1988年)でデビューした小説家さんです。「十二国記」の他に「残穢」「東京異聞」「屍鬼」「ゴーストハント」などホラー要素が強い作風が特徴かと思います。どの本を読んでも結構怖い。小野さんの本は夜には読まないです、トイレ行けなくなるので。ただし「十二国記」は古代中国史に基付いているので、ホラーとは少しズレているかもしれないです。
彼女の文体は一言で言うと「燦然」でしょうか。読み進めると物語の色彩豊かな情景が、文字の向こう側に透けて見える気がするんです。ちなみに彼女の小説には少し難しい単語が多いので、語彙を増やしたい人にはうってつけですよ!
豆知識➕
小野さんは小説家 絢辻行人さんの奥さんです!
2人揃って僕の大好きな作家さんです…
2,物語の設定
十二国記は、私達が住む世界(蓬莱)と地球上には存在しない異世界(上の図参照)との両方が舞台です。2つの世界は虚海という広大な海に隔てられていて、「蝕」と呼ばれる嵐のような現象によってのみ繋がっています。異世界は神々が棲む五山を戴く黄海を慶・奏・範・柳・雁・恭・才・巧・戴・舜・芳・漣の十二の国々が取り囲むような構造になっている。
【十二国記重要語句】
①王(おう)
それぞれの国の統治者。
年齢性別に拘わらず、天意に従って麒麟によって選ばれます。王は麒麟と誓約を交わすと、不老不死の身となります。病気もなし、老いることもなしです。不老不死はともかく病気も老いも気にしなくていいのはちょっと羨ましくありませんか?その不老不死にも落とし穴があって、王は天綱(神々によって定められた世界の理)に従って統治を行うべしとされていますが、神々の意思から外れた行いをすると麒麟は失道という病に斃れ、やがて死んでしまいます。麒麟と王は一心同体。麒麟が死ねば、王も命を失うことになるのです。
②麒麟
この世界で最高位の霊獣。
天意に従い、王気(王たる人物が持つ気配、オーラ)を備えた人物と誓約を交わし、「王」を選ぶ役割をもっています。王が玉座に就くと宰輔として側に仕えます。慈悲深い生き物で、争いや血のにおいが大嫌い。血を見るだけで病気になってしまうことも!めちゃくちゃデリケート…
③蓬山
黄海の中央にある五山の一つ。
蓬廬宮(ほうろぐう)という宮殿があり、麒麟が生まれ育つ場所。そう簡単に人が行けるような場所じゃないです。僕だったら絶対行かない。
④虚海
十二国と蓬莱を隔てる海。
蝕に巻き込まれる以外に一般人が行き来する方法はありません。ただし神仙と妖魔は自分の意思で渡ることができます。
⑤蝕
本来は交わらない十二国記の世界と蓬莱とを繋いでしまう嵐のような現象。
蓬莱から人が流れ着いたり、実った卵果が流されてしまうこともあります。理不尽なことに、蓬莱から十二国記の世界へだけしか繋いでくれません。要するに一方通行。だから十二国記の世界に行ったが最後、家には帰れません。ただし王や麒麟は意図的にこの蝕を起こすことで、2つの世界を行き来することができるのです!
⑥卵果・胎果
十二国記世界では、子は里木と呼ばれる木に実る卵果から生まれます。子どもが欲しい夫婦は里木に祈りを捧げ実るのを待ち、実った実をもぎ取ります。稀に蝕によって蓬莱に流され、人間の胎内に宿ることがあって、こうして生まれた者を胎果と呼ぶのです。
⑦海客
蝕によって十二国の世界と蓬莱が繋がってしまった際に蓬莱から流されてきた者。
すなわち登場する海客は全て日本人です。
⑧半獣
獣にも人間にも姿を変えられる者のこと。
人間と獣のハーフではなく、この世界の人間と同じく、里木になる卵果から生まれます。悲しいことに差別を受けたりも。
⑨妖魔・使令
世界の中央にある黄海の地に棲息する、獰猛で人を害する獣。
基本的には黄海から出ることはないですが、王が天命に背く政治を続けることで荒廃した国には出現し、人間を襲うようになります。 妖魔の中から、麒麟が使い魔としたものを使令と言います。
3,登場人物
ここではあえて主要な登場人物の容姿と名前だけにしますね、そうしないと本を読む楽しみが減ってしまうと思う…
【中嶋陽子】
【ケイキ】
【楽俊】
【タイキ】
【驍宗】
【尚隆】
【六太】
【珠晶】
4,物語の楽しみ方
第一に、「題名の意味を考えながら読むこと」
後々それぞれの作品を読んだ時に気づくことになると思いますが、意味がないようで実は意味があります。これをするだけで物語の面白さは別格!
第二に、「蓬莱との違いを見つけつつ読むこと」
これは絶対にやって欲しい。実は、蓬莱と十二国記の世界との違いこそが物語の根本にあるものに気付くための鍵になるのではないかと思います…
第三に、「わからない単語や漢字はその場で調べて読み進めること」
物の名前、人の名前、地名… 正直かなり読みにくい上に難しいです。厄介なことに、ただ表現だけが難しいわけじゃなくて、「漢字」そのものが難しいんです。常用漢字ではない漢字も多々出てきますが、めんどくさがらずにちゃんと調べて下さい!漢字の意味とかが分かると難しいはずの文章が輝いて見えます笑笑
最後に
私たちが忘れていたことが、ここにある。
人が人として生きる上の本分とは何か。
信義とは何か。
人を信じるとは何か。
そういう太いテーマが
このシリーズの底に力強く流れている。
これは「月の影 影の海」の下巻の解説から引っ張ってきた北上次郎さんの言葉。この十二国記シリーズを表すにこれほど相応しい言葉はないと思います。是非とも十二国記を楽しんで!
次回:十二国記「月の影 影の海」
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